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「マイネーム・イズ・ジョー」/ケン・ローチ(1998)

アルコール依存症だった男が断酒会で自分の体験を話すシーンから始まる映画。
 主人公は37歳で失業中。回復して今は飲酒していないといえども、若くして無職であることの恥辱や不安、まだ完治していないのではないかと思われる落ち着きのなさ、そしてそもそもの気質としての直情性、世間知らず、過剰なまでの面倒見の良さというローワークラス的なキャラクターを主演のピーター・ミュランが演じます。
音楽の扱いもポイントで、仲良くなったケースワーカーの女性との食事の会話は「アーティスト当てクイズ」となり、「ハマースミス?」「クラッシュ!」、「ホンコン・ガーデン?」「スージー&ザ・バンシーズ!」の後は、ダニー・オズモンドが出て来て、我々がトンガってると思って聴いていたバンドが、イギリスの一般人がヒット曲として聴いてた事がわかります。
そして彼が部屋でかけるカセットテープから流れるのは彼のイメージとはそぐわないベートーヴェンの協奏曲。それは、彼が荒れていた時にレコード店のひと棚分のカセットテープを万引し、それをパブで売り裁いたがどうしても売れなかった一本で、家で聴いてみるて心が救われたと話します。
この映画もスコットランドのグラスゴーが舞台。カンヌ映画祭で主演男優賞を受賞したピーター・ミシュランがスコットランドの正装 キルト・スカート姿で壇上現れたそうで、ケン・ローチがローワー・クラスの出口のない悲惨な生活だけでなく、彼らの誇りを描いたからだと思います。

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