【感想文】風と共に去りぬ第6巻(終)/マーガレット・ミッチェル
『Rhett Butler's Arf』
本書「風と共に去りぬ」は、Deep Southのジョージア州が舞台なので、スカーレット達は土着のSouthern English(いわゆる南部英語)を話していたと思われる。ある事情により私が2年半程住んでいたフロリダ州ジャクソンヴィル郊外は、Deep Southとの境界に位置している為、南部英語で会話する者が大半を占めていたことから、後述する南部英語のヒアリングに私は大変な難儀を強いられた(※南部出身の有名人がTV等で話す南部英語と、地元民のそれとは全くの別物である)。この地で地元民との意思疎通を図るにはネイティブあるいはそれ以上の英語力を要することを痛感した私は、ManicでDepressionな日々をHighly fuckin' enjoyableに過ごした。
そうした背景から、個人的に気になったのは作中頻繁にみられる <<ゆったりとしたチャールストン訛りで...>> というレット・バトラーの話し方についてである。私は南部英語の中でもチャールストン訛りなるものを知らなかった為「American English / Albert H.Marckwardt」を参考にしてその特徴を次の通り整理した。
■チャールストン訛りの特徴:
①語尾と子音の前の[r]、子音と母音を繋ぐlinkingの[r]は発音しないことがある(=non-rhotic)。
②二重母音[ai],[aa]等は単母音で発音する為、mineは[man]となりoilは[ol]となる。
③dive、why、my等で[ai][aa]と発音することがある。
④二人称複数形としてyou-allあるいはy'allを用いる。
⑤[r]の前に母音が付くとそこだけ発音する為、earとair等の区別が付かない。
⑥過去、過去分詞を現在形とすることがある。
⑦“she use to didn't~”という形を取る。
⑧“she come up for borrow books~”という形を取る。
⑨母音を引き伸ばして発音する(=southern drawl)。
以上、難解なチャールストン訛りの特徴を念頭に置いて、本書のクライマックスにおけるレットの心の機微というものを考えていく。
<<マイディア、まったくどうだっていい。(My dear, I don't give a damn.)>>岩波文庫,第6巻,P.355
上記の引用は、最終章においてレットがスカーレットへ向けた去り際の一言である。
この台詞、一見すると辛辣に捉えられがちだが、そんなことは一切ない。というのも、前述のチャールストン訛りルール①②③⑤⑨に従って、この台詞をBPM60のテンポで発音することで『ま~でぃ~、あ~ど~ん ぎぶぁー だあああああむ。』となり、どこか間の抜けたほのぼのとしたトーンに変化するからである。したがって、この台詞を日本語に訳す場合、 <<マイディア、まったくどうだっていい。>> とするよりも <<やーい、そんなものは屁のかっぱだいっ。>> ぐらいにしといた方が自然である。ここで物語は幕切れとなってしまうが、まあこんな軽い感じのレットの怒りっぷりなら、スカーレットのいつものゴリ押し作戦でうまいことやってこの恋愛は成就することになるであろうと私は思う。
といったことを考えながら、この内容を南部人のMargieにメールしたところ「Kiss my fuckin' ass if you don't wanna be killed mother fuckin' you.」という返信が来た。
以上