ガラスコップの旅に出たい。
そうだ、旅に出よう。
陳腐で安直な発想が、今日一日の成果。
莫大で不毛な自問自答は、やめれば終わることだが、終わらせるには惜しいと思うのが、今日この頃。態々精神を壊してしまったのは、諦めたつもりで諦めない自分がいることだと思うのだ。一度諦めたはずだった自己と向き合う最後のチャンスはこれだ。これさえ脱却すれば、何かしらを得るはずなのだ。模範解答とまではいかずとも、大幅な変化とまではいかずとも、今までの自分とは別の自分がわかる。そのためにも、今の私には精神安定と思考の時間が必要だった。
精神安定。生憎、本来のセルフコントロールでは耐えきれず薬を欠かせない。されど、安定には足る。
思考の時間。これが今の私には、無理難題である。家族がいて、仕事があって、研究がある。人並み以下に堕落は許されるものの、人並みの人間らしい生活は強いられる。つまり、思考だけに費やす時間は与えられない。さて、どうしたものかと考えること数時間。
そうだ。旅に出よう。
この結論へと落ち着く。
一人で素泊まり。食事も風呂もはたと欲したときにとる。歩きたい時は歩き、篭もりたいときは篭る。そんな旅を妄想する。
そんな名案は、すぐ様現実が却下した。
なぜなら私には金がなかった。躁状態の私めの愚かしいこと憎らしいこと……私は常に借金に追われマグロ漁船に乗る心地である。つまり、そんな悠々とした遠出はトドメになるだけなのだ。
妄想は幕を閉じる。
だが然し、諦めきれないのもまた事実。
再び巡らす思惑の果て、現実問題と妄想の折衷案へ辿り着く。
いつもの散歩に出て、ネカフェに泊まり、始発で遠すぎない田舎に行き、銭湯に行くだけの、安上がりな放浪旅。
浪漫とは遠ざかるが、悪くない。
何よりワクワク感は健在だった。
刺激を加えたいな…と、さらに考えあぐねた末に、もう一声と、今日の仕事帰りに、とあるものを買って帰る。
百均のガラスコップ。
此奴に、旅最中思いつくままのことをマジックペンで書いていこう。
それで、適当なところに置きやって帰ろう。
なんて悪巧みの戦利品。
実行はまだ先。次にとった連休にて。
そのときまでにこの高揚感が醒めてなければいいななんて、考えながら。
今日も深夜の日記を閉じる。