私を見ろと訴えるお前。
文字にすればこの思考に結末はあるか。無闇矢鱈に文体やら段落やらを探らず、考えず、ただ一心に文字を吐き出す。止めどない思考の波は、寄せては引いていく。紙を走る鉛筆で追いつかなければ、この媒体に打ち込む指すら追いつかない。こうして綴る間にも、体裁を整えんとする理性が本来の思考を鋳型に流し込んだことだろう。 ほらみろ、今だって消去に指を押し付け、新たな表現へと整えている。それでも、どうだっていい。形は変わってもいいから、兎に角今は書かせてくれ。外に出してくれ。そう訴える私の中のお前。
お前は常々、自らの内側に軋轢を起こす矛盾に、疲弊と苛立ちを覚える。
常人で在りたいのか狂人でありたいのか。
正常で在りたいのか異常でありたいのか。
普通になりたいなら何だそのめかしこんだ文と絵は。何なんだそれは。普通に当て嵌ることで楽になるというならば構わない。だのにお前は拒絶と反発の末に身体と心を来したではないか。今でも冷や汗が止まらない。この駅のホームの、待合室ですら私を追い込む算段を練っているかのように錯覚してしまう。追い詰めているのはお前自身にそう違いないと、お前も頭では分かっているくせに。
私は自らの内側にある思考全てがズレていると、既に理解してしまった。理解したふりをして、自らも誰よりも異常だと、お前の異常性を他者に認めさせたがった。世の中ごまんと溢れるファッション異常者かもわからぬ輩とお前は、紛れもなく同等だ。ほんのひと握りの世界に異質を認められ、『才能』としてカテゴライズされた者を見上げ、私だってそちら側なのだと喚いたところで、お前は変わらない。そらみたことか、お前はわかっているじゃないか。お前は確かに普通の世界に当て嵌ることができない。然しお前は、異常の世界では尽く凡人である。何故?何もしないから。何もしないまま、極めることすら気力を失ったと、勝手な諦めを享受したからだ。
私はお前を知っているぞ。お前のことを知っている。お前が他者の裏の裏側まで見透かしている達観したように、私はお前を見透かすぞ。
お前はお前の異常を発信したいのだ。どうしたって、取り繕ったって、承認を得たいのだ。承認されたうえで、異常を普通にされたいわけでも才能とされたいわけでもないくせに。それでも誰か私を見ろと叫びたがる。
だから表現に手を出したのだろう。それで、経過は、結果は、今はどうだ。
絵を描いて外では認められず、病むおえず内に描いた。だが、それは『才能』の前では酷く惨めな普通だった。
文を書いた外では認められず、病むおえず内に書いた。だが、それは創作の域を抜けず、幾ら少量の同情と賛美を浴びようたところで満ち足りなかった。その小さな世界だけで足止めを喰らっている。
歌は歌っても下手だった。音楽は手すら付けたことがない。諦めただけ。
絵は才能の前の凡人として挫折した。
文は本物を見ることを望みながらも恐れ、現状維持。
歌は手をつけることすらしない。
確かにお前のそれは『才能』になるとは限らない。『才能』の前では私も凡人かもしれない。そのとき再び凡人ではなく異常でありたいと枯渇したものを欲する。普通には生きることができないのに。
大丈夫、お前はどうしたってお前としての異常がある。それは理解されることもあれば理解されないこともある。何方が多数かは、そこの住人共に寄る。奴らは私同様プライドが高いのだ。私こそ私こそと他者を弾圧せねば生きてはいけない。どうしたって苦しみから解放されることはない。お前も、お前として生まれた以上、苦しいと感じたこの呪縛に抗う他ない。
普通に戻ろうとして、壊したのは不幸中の幸いだと喜ぶべきことだ。お前は壊れなければわからなかった。自らが、矛盾を抱えるしかないということ。自らが、全てのお前たちを捨てきっていなかったこと。自らが、何方もやるしかないと知ったこと。
知らずして普通に終わるより、分からずして手遅れになるより、ずっとお前にとっての幸福だ。
確かに、たしかに今のお前に戦う気力はない。薬に頼らなければ、意識しなければ、朽ち果ててしまいそうな精神だ。それでも、戻ってこい。這い上がって、何方にも立てるようになるように、生きろ。
生きてほしい。
そして、自分と、お前と、外と、他者と、誰かと、みんなと、世界に、ぶつける方法を、私と考えようじゃないか。
この文章は酷いものだ。実に愚かな自語りだ。決起のためだけに吐いたもの。誰かに見せたいものでもない。ただ、この際だ。誰かに見てもらいたいという欲求を果たすお前の背を押す機会にしよう。
社会人として困るから開けるなと言われた、二つ目のピアスを穿った。髪色をブリーチしてやった。金もないくせに自らのために病院へ、旅へ、家を出る。狂気のうちに、やれることをやってしまえ。死を選ぶよりはずっといい。
ハッシュタグを存分に使う。存在するかもしらないタグ名を添えて、こんな駄文を外に落としていく。
私は、お前は、死を選ぶには早い。
お前は私同様に、お前を訴えてながら生きる権利があるはずなのだ。