カードゲーム『PLAY!たぐコレ』で 「現代アート」と遊んでみた
「アート」の表現や解釈に正解はない。表現する側も、鑑賞して受け取る側も、さまざまな感情や感想を持つものだ。そこには当たりも外れもなく、自由な解釈が出来るのが面白いところである。だからこそ、作品を鑑賞して「よくわからない」と思ってしまうのはもったいない。そこで、今回は現代アートをもっと直観的に、感覚的に、遊ぶように鑑賞をすることができる『PLAY!たぐコレ』というカードゲームを紹介したい。まずは、実際に遊んでみることにした。
木々の葉の色が深まっていく11月中旬。多摩美術大学八王子キャンパス芸術学棟の一室で、4人の芸術学科生がカードゲームで遊びながらテーブルを囲んでいた。とはいってもここは教室である。それはトランプやUNOではない。キース・ヘリング、奈良美智、名和晃平などの収集で知られるタグチアートコレクションが所蔵している現代アートを素材にした『PLAY!たぐコレ』(以下、『たぐコレ』)という新感覚のカードゲームだった。大きさは普通のトランプと同じくらいで、全52枚のアートカードと12枚のトークカードに分かれている。
コンセプトは「現代アートとおしゃべりできるカードゲーム」。遊び方は自由なので、自分でルールを考えるのもおもしろそうだ。今回は同封されていたリーフレットのルールに則り、トークカードのお題に答える「クエスチョン」とアートカードをみんなでつないで一つの物語を作る「ストーリー」で遊ぶことにした。
収録されているアートカードに載っている作品は、絵画から彫刻、写真や映像作品など、かなり多様なラインナップになっており、作家も作風もさまざまだ。それらを見て何を思い、何を感じてその答えにいたったか。「作家は、どんな気持ちでこの作品を作ったと思う?」「手で触ったらどんな感じだろう?」などの「クエスチョン」に答えることで、各人の思いが吐露される。「この作家は人から逃げたいという気持ちで制作したんじゃないか」「手で触ったらフニフニしてそう」など、そこには正解も不正解もない。むしろ、他の人の答えが面白くて笑ったり、「その発想はなかった!」と感嘆する声も、遊びながら多く上がった。芸術学科では今までアートに関するさまざまなことを学んできたが、『たぐコレ』で遊んでいる間はむしろ、みんな童心にかえって現代アートと向き合うことができたようだ。
一緒に遊んだ学科生たちは、普段から展覧会やギャラリーに足を運び、さまざまな考察をすることが習慣になっている。彼女たちは「今まで学んできた多くの知識を使わなくても楽しむことが出来て楽しかった」と口をそろえる。また、「遊びながら作品の印象が深まることもあれば、作品を使って一つのストーリーを作っていく中で想像力が働くことは美術教育的観点から見ても斬新でよい」という意見もあった。確かに作品をただ見るときよりも、それを題材にして遊んでみることで観察力や想像力が豊かになる実感があった。さらに、『たぐコレ』で遊んで印象に残った作品を改めて調べてみたり、本物を見に行ってみたりと、アートへの興味を深めて次の行動を促すきっかけにもなった。家族や友達同士のコミュニケーションツールにもなり得る『たぐコレ』は、子どもから大人まで幅広い年齢層が楽しめるカードゲームである。
美術鑑賞自体も、これくらいシンプルなものでいい。「自分はこうだと思う」「この作品を見て、これを連想した」など、そうした直観的な感想の積み重ねが感性を育んでいくのだろう。そう考えれば、『たぐコレ』は美術鑑賞のハードルを下げ、美術教育にも一役買っているユニークな遊びだと思う。
文・撮影=大谷桃夏
PLAY!たぐコレ
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タグチアートコレクション
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