小説を読んでいるけれど小説がわからない

わりと小説を読むほうだと思うし、小説は好きだ。けれど小説がわからない。
何を言っているのかも、何が言いたいのかもわからない。面白いのかもよくわからないものもある。わからないけど読む。
読み終われば、よかったとか、これはすごいとか、素晴らしいとか、好きだとか、凄まじかった、とか思う。なんなのかよくわからなかったのに。
だから小説読んでもちんぷんかんぷん、という人も小説を読んでいていいと思う。ちんぷんかんぷんだったなあという読書体験ができたのだからそれでよいと思う。

たとえば私が2023年に読んだ小説は
「罪の轍」奥田英朗
⭐︎「破局」遠野遥
⭐︎「俺が公園でペリカンにした話」平山夢明
「ずっと喪」洛田二十日
⭐︎「完全犯罪の恋」田中慎弥
⭐︎「シン・サークルクラッシャー麻紀」佐川恭一
⭐︎「デッドライン」千葉雅也
⭐︎「芝公園六角堂跡」西村賢太
⭐︎「終わりなき不在」佐川恭一
⭐︎「無情の世界 ニッポニアニッポン 阿部和重初期代表作II」阿部和重
「枕アイドル」新堂冬樹
⭐︎「掃除婦のための手引き書」ルシア・ベルリン
⭐︎「蝙蝠か燕か」西村賢太
⭐︎「愛」ウラジーミル・ソローキン
「サワー・ハート」ジェニー・ザン
「異常 アノマリー」エルヴェ・ル・テリエ
「流れる島と海の怪物」田中慎弥
⭐︎「すべての月、すべての年」ルシア・ベルリン
⭐︎「十二月の十日」ジョージ・ソーンダーズ
「パチンコ」ミン・ジン・リー
「私の裸」森美樹
⭐︎「太陽・惑星」上田岳弘
⭐︎「悪童日記」アゴタ・クリストフ
⭐︎「鳥がぼくらは祈り、」島口大樹
⭐︎「フリアとシナリオライター」マリオ・バルガス=リョサ
「赤泥棒」献鹿狸太朗

の26作品だが、うち冒頭に⭐︎がついているのは特によくわからなかったものだ。なんとほとんどわかっていない。
けれど、よくわからない=面白くない、というわけでもない。面白いから小説が好きというわけでもないけど。
そもそも小説が面白いとはどういうことか? ということもよくわからない。
小説を読んでもよくわからないし自分がどんな感想を抱いたのかもわからない。
ただ、よい小説には何かがあると思う。その何かを求めて小説を読む。その何かを私は個人的に〝力″ととりあえず呼んでいる。
小説には力があると思う。その力を感じたくて小説を読む。そしてよくわからなかったけど力があった、と思う。
私は文学部などを出ていないし、小説の読み方を教えてもらったことがない。忘れっぽくて何が書いてあったのかもすぐ忘れる。ただ、力を感じたことだけ覚えている。
読書習慣のない人から、本読んでてすごいね、などと言われることがあるが、全然すごくない。何もわかっていないのだから。すごいのは何もわからない人にも読み切らせてしまう小説だ。

小説を読む人は小説をわかっているのだろうか。きっと私が見逃してしまっているものをたくさん拾えているのだろう。羨ましい。
でもこれからも私はわからないなりに小説を読むと思う。力のために。

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