11月2日 竜王町文化祭・妙国寺秋の講談会後記
秋晴れ。完璧。世界終わるんか。などと思いながら新大阪駅へ。
お腹が痛くなり、トイレへ駆け込むが長蛇の列。こちとら危急を感じてトイレに駆け込んでいるのだ。こんな風に待たされたらどうなっちゃうかわかんないぞ、と思って身をよじらせながら順番を待つ。しかし同じように並んでいる人々は皆涼しい顔をしている。
はあ?である。どんなモチベーションでトイレに並んでいるんだ。どのタイミングでトイレを志したらそんなに涼しい顔で並べるの?ていうかその余裕があるなら前のあなた順番を変わってくれ。いや変わってください。こちらは完全に危急なんです。
思っているうちに順番が来るかと思えばまだ順番が来ない。
得てしてこういう時の気を紛らわす為の、時間を早送りしたいがための思索というのは時間というのを消費しない。頭脳の回転速度が上がるのだろうか。
だからと言って、講談のことを考えたり、企画を考えたりするには下腹部に思いが募りすぎているから全うな思考へと至らない。
耐えるしかないのだ。
この辺りまで考えてもまだ順番は廻ってこず、諦めて無になって順番を待つ。
無事トイレを済まして野洲へと向かう。
無になるべきだ、ああいう局面では。ひとつひとつが勉強だ。
野洲で師匠と落ち合い、竜王町の公民館で行われる町の文化祭へ。
師匠が特設ステージで「近江牛物語」をされるのだ。
秋晴れのトラックステージで師匠が講談を語られる。どんどんと人が集まってくる。
講談を最後まで聞くと牛鍋の無料試食券がもらえるのも少し関係していたかもしれないが、講談が終わるころには客席かなりの賑わいになっていた。
その後、屋台の食べ物をいくつか食べさせていただいて、野洲駅から大阪まで帰って今度は堺東駅へ。
妙国寺さんでの講談会。
蘇鉄の立派な庭園をバックにした講談会。
玉山は前座で出させていただいた。
堺の思い出と「玉田玉山物語~玉山は何故講談師になったのか~」そこから「三方ヶ原の物見」をさせていただいた。
師匠から「15分喋ってきて」と言われていたけれど、出番終わると開演から16分目だった。必死だったので時間の計算なんてできなかったけれど、なんとか時間通りに行って良かった。
師匠は「妙国寺と家康」の講談を語られた。
大阪の陣で徳川の重要拠点だった妙国寺。
大阪城周辺と妙国寺を行ったり来たりしながら物語が進んでいく。
僕も取材の時にご一緒していたので、答え合わせのように講談の中に妙国寺の歴史物語が組み込まれて行くのをみていた。
今日はくしくも「地域の歴史物語に取材した講談」を二本聞いたことになる。
歴史を語る為のコツや蓄積が沢山ある講談を使って地域に取材をした講談を作り、地域の人に聞いてもらい、更に地域のことを知ってもらう為に他の地域の人に聞いてもらう、という活動は嬉しくなる人が多くっていいな、と思う。
色んな講談師がそういう営みをして、いろんな地域から歴史物語を掘り起こして講談にして何年かに一回地域の歴史講談サミットとか開いたらいいんじゃないだろうか。ゆるきゃらグランプリみたいに。
地域の数だけ、地域の数以上に物語があるのだから無茶苦茶面白い話、絶対もっと残っていると思う。そういうものに沢山出会える講談師生活になれば幸せだな、と思う。
その後、師匠の打ち合わせに同席させていただいて、南海電車からJRに乗り換えて師匠とは西九条でお別れ。
JRで大阪まで帰ってきて乗り換え、新大阪に帰ろうとするが電車を間違え尼崎へ。
先月もこのパターンが二回あった。もう尼崎に引っ越してやろうか、とも思うけれど自棄をおこしてはいけない。尼崎に引っ越したら引っ越したで間違えて新大阪に行ってしまうことになるのだ。
その時僕は「ああ、こんなことならば引っ越さなければよかった。敷金礼金を無駄にした」などと思うだろうから敷金礼金分新大阪を最寄り駅としていたほうが得なのだ。
尼崎から新大阪へと返していく途中、2歳くらいの子供が全力で泣き続けていた。
お母さんらしき女性は明らかに疲れている様子で、放心気味。
ここは僕の出番、と何度かおどけた表情をして泣いている子供にトライする玉山だったが、親に「連合赤軍みたいな目をしている」と言われたことだけはある。子供は全く泣き止まず、泣き声にビブラートまでかかってくる始末。これじゃあ僕は不審者だ。置き所をなくしたおどけた表情をゆるゆると溶かして無表情に戻して頭をかく。
10分にわたって泣き続けていたあの子供。修羅場をやってもらったら中々息が長いんじゃないか。
子供の泣き声を背に電車を降りて新大阪駅の広場のベンチ。
この時間は空いているであろうトイレに行ってから帰ろうと思う。
危急ではないが、この時間空いているトイレならば許されるだろう。
もしも並ぶことになり、身をよじって待っている居る人が後ろに来たら順番を譲ってあげよう。その代わりいつか俺にも譲ってくれよな、いつかでいいから。
明日スパワールド→立川文庫続き読みのダブルヘッダー。
ロウリュウ2回の後に3本講談。未知の世界。恐ろしいことだ。どうなっちゃうんだろうか。