2024年東京都知事選挙 輝け!政見放送大賞
はじめに
2024年東京都知事選挙に於いて放映された政見放送(NHKver)を全部観て、独断と偏見で、独断で作った各賞を選考しました。
政見放送のさらなる発展と向上を願っておりまます。
興味を持たれたかたは、何らかの方法で、政見放送をぜひ見てみてください!
〇パフォーマンス部門〇
●最優秀パフォーマンス賞
ドクター中松候補
☆ドクター話法とでもいうような、自らの偉大さを最大化した話法。96歳という年齢を生かした論理展開と謎の説得力は一見の価値あり。
●優秀パフォーマンス賞
さわしげみ候補
☆発声滑舌、調子のコントロールなど、今回の政見放送の中では出色のエロキューションを持っている。キャラクターに全振りしたわかりやすさも良い。
石丸伸二候補
☆緊張が顔に出ており、実力が出ているのかは疑問であった。
が、3つのポイントを説明する際の手の動きに本人の自意識、のようなものがにじみ出ており「その人がどういう人か」を知るという政見放送の役割を十全に果たす放送にしていた。
三輪陽一候補
☆緊張感はあったが、ほかのNHK党のものよりも自分の色を出そうという努力が見え、それでいて元のテキストへのリスペクトも感じさせる構成。そしてこの政見放送は何より必死であった。都知事になることへの必死さ、じゃなかったことが残念ではあるが。
〇セリフ部門〇
●最優秀セリフ賞
小池百合子候補「DXは引き続き爆速で進化・寿司テック東京」
☆何を言っているかはわからないが、すごいと思う人はすごいと思うし、笑ってしまう人は笑ってしまう、腹が立つ人は腹が立つ。聴くものすべての感情に波を絶たせる小池百合子らしい名セリフ。
●優秀セリフ賞
内藤久遠候補「民主主義を取り戻せ」
☆「NHKをぶっこわす」のパロディの勢いで、こんなにいい言葉を語るという面白味。
民主主義の要素である、ポスター掲示場や政見放送のジャックをするNHK党を批判する文脈のパロディとして強烈である。
ドクター中松候補「私が都知事になったら世界中が注目する」
☆こんなにうなずいたことはなかった。ドクター自身は「私のように著名な人間が都知事になれば」という文脈で言っていたが、当然見ている側としては「96歳が都知事になるなんてことがあれば」という気持ちである。
古田真候補「みずほ銀行は腐っている、三菱UFJ銀行も場合によっては腐っている」
☆時間が余ってしまった古田候補が気を取り直していった一言。まさに「言うにことかいて」であった。場合によって腐っている、などという言葉はなかなか思いつけるものではない。
三輪陽一候補「立花孝志が代表を務める三輪陽一です」
☆政見放送序盤のセリフ。おそらく「立花孝志が代表を務めるNHKから国民を守る党の三輪陽一です」と言いたかったのだろうけれど、不思議な間違え方に。ある意味代議制民主主義とは一体何か、と考えさせられるセリフ。
桜井誠候補「20年、この問題で戦ってきました」「昨日今日、昨日今日ですね、立ち上がって昨日今日皆さんにお約束しているわけじゃないんです」
☆桜井候補の排外主義的主張には頷けないが、長年何かを続けてきた人間の静かな迫力と、それでも無視をされる怒りが良く出ていた名セリフであった。
〇各部門賞〇
●NHKから国民を守る党賞
上楽むねゆき候補
☆同じテキストを使うNHK党の中で最も良いパフォーマンスをした候補。明るい読み口で、自らの名前を題材にしたまくらもよい。
●コメディ賞
小林弘候補「ザブングル加藤氏とのすべらない話」
☆今回は人を馬鹿にしたような笑いが多く、見ていて大変に傷つく政見放送が多かったが、小林候補のザブングル加藤氏とのエピソードトークは人を傷つける笑いに逃げず、しっかりとウェルメイドに語られていて上質でさわやかさすら感じるものだった。面白いかどうかは皆さんが見てみて判断してください。僕は笑ってしまいました。
●歌唱賞
しんどう伸夫候補『君のため』
☆この選挙に向けて果敢に新曲に挑戦。歌唱賞は後藤輝樹候補との一騎打ちだったが、後藤候補の陳腐で少しずれたような臭みのある博愛主義的などうでもいい説明しすぎのリリックと比べ、しんどう候補の歌詞には余白があり、また作曲も現在の流行である転調を取り入れた華やかなもので、シンガーソングライター歴の長さを見せつける充実の受賞となった。
●特殊効果賞
河合ゆうすけ候補
☆かなり動きの多い政見放送で、名前の札が実際にはおいていなくてテロップであること、所定の椅子がコロつきであること、候補者と通訳の方の距離が結構離れていること、など、政見放送好きが普段の政見放送を見ているだけではわからない部分を明るみに出してくれた。
●努力賞
後藤輝樹候補・河合ゆうすけ候補
☆パフォーマンス自体はよくなかったが、よくお稽古をしていたのがよくわかる政見放送だった。
〇脚本部門〇
●最優秀脚本賞
桑島康文候補
☆核融合が一般化した世界観を見事に描写した。純粋水爆は5分でできる。一億層水爆で一米安保破棄、都庁に核融合課、核融合係…強固な想像力の感じさせる描写を高く評価した。
●優秀脚本賞
木宮みつき候補
☆ゲサラ法なる徳政令が国際法として存在し、トランプが闇の勢力を解体するのにほぼ成功した、という語りには魅力がある。いったいその世界が今後どうなっていくのか。未来を思わずにはいられない舞台設定であった。
安野たかひろ候補
☆テクノロジーによるアップデートを掲げる。技術はハンディキャップのある人を助ける。という一つのユートピアを描いた。桑島候補、木宮候補ともに、ともすればディストピア感のある政見放送であったが、安野候補の政見放送にはやってきてほしい未来、を感じることができた。
〇政策部門〇
●政策賞
横山緑候補
「コンビニ袋無料化」「大人食堂」
向後真徳候補
「定休日のない学校を作る」「365日無料給食」
古田真候補
「予備選を実施する」
大和行男
「オンライン診療の充実」
清水国明候補
「災害が起こる前に、疎開先を作り平時はそこでアウトドアを楽しむ」
小林弘候補
「公衆トイレの増設」
安野たかひろ候補
「公共交通機関が減っている多摩地区での自動運転」
〇政見放送賞部門〇
●優秀政見放送
向後真徳候補
☆とにかく政策に具体性がある。自らの政策を「むつかしいので目指す」という表現をしているのも誠実。この人ならば公約に取り掛かりはするだろうという誠実さを感じさせる。
ドクター中松候補
☆元気な96歳である。見ているだけで感動をしてしまう。本当のことなのか嘘なのかわからないことを並べ立てるわけだが、96歳ということですべてを許すし、罪のない大言でよい。古き良き政見放送。
●最低政見放送賞
津村大作候補
☆「NHKをぶっ壊す」という言葉をパロディし、様々なものを「ぶっ潰す」と連呼していく。排外主義的な思想を乱暴に、しかも「面白い」と思っている感じでで語るさまは怒りを通り過ぎて恐怖すら覚える。「ぶっ壊す」を「ぶっ潰す」にしているのも元ネタへの経緯が払われていないくて不愉快。排外主義で言えば桜井誠などはまだ真剣で、その一点において同じ人間として耐えよう、と思わせるが、この候補のそれは真剣さすらなく、正視に耐えられるものではなかった。
●最優秀政見放送
福本繁幸候補
☆面白くないもの、人を傷つける政見放送が多い中、珍奇な手に走らず、手話からスタートしたそのやさしさ。
そして今回苦難の手話通訳が多かった手話通訳者が手話をせず、たどたどしい手話をする候補者を見つめるだけの時間。そのほほえみとうなずきには涙を禁じえない。
政策自体も包摂力がある非常にやさしいもので、この人になら都政を任せてもよいかもしれない、と政見放送のみで唯一思わせる候補であった。
まとめ
政見放送が変わりつつある。
その中で今回の選考では、どちらかというと古式ゆかしい形の政見放送に高い評価をつけることとなったように思う。
これから政見放送がどう変わっていくのかはわからない。
しかし今回の政見放送も歴史として積み重ねられ、そしてそれを踏まえて新しい政見放送は流されていく。
素晴らしい政見放送がまた観られることを祈っている。
出馬し、政見放送を行ってくれた候補者の方々、放送に際してお骨折りいただいた方々に国民として御礼を申し上げて、まとめとさせていただきます。
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