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「好い食卓」レポートまとめ

●はじめに

こんにちは。
食の学校foodskole(https://foodskole.com)に関わらせてもらい、参加者が「いい(好い)!」と思うような食卓を『好い食卓』としてまとめることになりました。

●『好い食卓』を始めようと思ったわけ。

私自身小さい頃から食べることが大好きで今もずっとおいしいものに目がありません。丁寧に作ってくれたご飯を大切にしたい、そして何より食べ物は生き物の命をもらっている感覚があったので食を大切にしたいと思いながら育ちました。そんな中、日本では大量のフードロスが生まれていていると知り、食の生産と消費のあり方に違和感を覚えました。それをきっかけに、「食とサステナビリティ」をテーマに学んだり取り組んだりしながら、「何をどう食べるべきか」探究しています。

最近頭で良いと思う「良い」より、純粋に好きな「好い」を大事にしたいと思うようになりました。
元々食べることが大好き。純粋に好きだから食べて来たけれど、食が作られる背景を知るにつれて、食はあらゆる人や環境に良くも悪くも作用すると知り、それならばきちんと背景など考えて食べる必要があると責任感を感じるようになりました。でも、頭で考えすぎると、正解がわからなくなり食に制限をかけたり楽しめなかったりします。それなら回り回って、純粋に好きなものを好きなだけ選んで食べて、それがいい影響を生み出せる。”良い”と思える思想の土台がある上で、それを心から”好き”だと思えるものを一番大切にして行きたい。そんな形が幸せな形で理想だと思うようになりました。

また、食卓って面白い。食卓は家庭の空間のイメージがあるので食事に比べて個性が出る空間、というイメージがあります。
食事はいろんな人と一緒にできるけど、食卓っそれぞれのお家の中にある風景だからのぞけない。食卓は食事と比べるとより”その人らしさ”が表れるように思います。同じ食材やおかずでも、思想や好み、価値観がちがえば作り方や食べ方もきっと違う。個性が生まれる場所だから、各々の食卓を覗き合ってみたいなと思いました。

フードスコーレで様々な視点から食を熱心に学ぶ人たちの、思考の変化と共にどう食事も変わるのだろうか。その変化を残しておくのは面白いのではと思い、各々の”好い”食を記録したくなりました。

ふと思えば、フードスコーレを運営するhonshokuの理念も「食卓に愉快な風を」。どんなシーンでも食事をする場面は「食卓」なのだと捉えたとき、みんなの食卓をシェアし合うと愉しいだろうと思いました。

みんなが思う好い食卓をまとめたい。そんなわけから始まった『好い食卓』。


フードスコーレの前期の受講生は、オンラインで授業の感想をシェアし合いながらコミュニケーションを取っていたので、slackに「#好い食卓」チャンネルを作って食事の写真と感想をシェアし合いました。
食はその人を表すと思わされるような、十人十色のごはんを、連載としてまとめます!

●本編

1.「近い」食事

地産地消をすると、新鮮なものが食べれたり、住んでいる地域でどんな食材が育てられてるのかを知れます。とはいえ、すべてを地産の食材で料理するのも難易度が高いですよね。
近くで採れた地産地消のもので料理するのもよし、離れていても思いが籠もった食材で料理するのも暖かい気持ちになって”好し”。

地産地消

”東京産のルッコラ、茨城産の白ネギ、千葉産のもやしで地産地消のサラダボウルを作りました。近郊産の野菜が全然なく、何件もスーパーを巡って、やっとの思いで見つけた食材たち。都内で採れた野菜や魚介類はどこで消費されてるのか?そんなことを考えた買い物と食事になりました。”

※都内の農家さんは軒先販売が多く、その他一部のスーパーでも売っているよう。(特に練馬、板橋あたり)江戸川区は小松菜が産地で学校給食用に作っているとのこと。

思産思消

“今夜の食卓は、思いのこもった食材でいっぱいでした。
北海道稚内の親戚が釣った鮭と自家製いくら。徳島県小松島の友達が庭で育てたかぼす。綾瀬の友達の自家農園のなすと人参。ふるさとの味と友達のおすそ分け。
鮭とかぼすは「サーモンのミキュイ」に。自家製いくらはいくら丼に。なすは味噌汁、人参はきんぴらになりました。
地産地消からは遠いけれど、送ってくれた人の想いがこもった食材を利用したので、思産思消な食卓です。ごちそうさまでした。

2.余韻の残る食事


ポケットマルシェ 高橋さんのお話の中で、「繋がりのある生産者から食べ物を買うと”余韻が残る”」とおっしゃていました。満腹感に満足するだけではなく、食べ終わっても幸せな状態が長続きする食事、そんな余韻の残る食こそ豊かな食ではないでしょうか。

知ると、おいしい

”友人が料理する食堂で食べた麻婆豆腐。何度もスパイスを調合して究極のおいしさになるまで工夫したんだよ、と料理に対するこだわりと愛情を聞きました。味だけでなく愛おしさも噛み締めながら食べ、作り手のわかる料理には、誰かに教えたくなるようなおいしさがありました。”


3.長老シリーズ(ちょっと冷蔵庫で長生きしちゃった食べ物たち)


余ってしまった食材たちをどう食べようか?
「腐敗」とは偶然のマリアージュで、新鮮な食材にはない、深く熟した味わいへ向かう過程だと捉えられるかもしれません。
食材を使い切るヒントになりますように。

冷蔵庫の余り物でつくるカレー

”写真ばないのですが(もうお腹の中だから)、昨晩「長老カレー」をつくりました。長老カレーはスーパーの見切り品をとにかく具材でぶちこむカレーです。長くスーパーにいた子達なので長老です。カレーは良くも悪くも全てを包み込んでくれるので、どんな子達でも仲良くできます。昨晩の長老たちはアスパラ、小松菜、鶏肉、ひらたけ、にんじんでした。ちなみにカレーで使ったスパイスはクミン、コリアンダー、ターメリックだけです。”

黄色いトマトカレー


”冷凍庫の在庫一掃キャンペーン。
以前に救済したバジルで作ったジェノベーゼと、これまた救済した黄色いトマトで作ったトマトソースを使ったピザ。黄色いのにトマト味がするのが、不思議な感じで、楽しいごはんでした。”

4.自分なりの料理

自由に料理し、自分なりの料理を作り、新しい料理の仕方を発見していく。
料理は楽しい日常の一つであって欲しいです。

変幻自在なコーラ

クラフトコーラを作ってみました。手作りできると思ってもなかったドリンク。キッチンでの料理時間たった10分、そのあと冷蔵庫で一晩寝かせるだけで完成して、手間がかからない。
煮立てると順番にスパイスの香りが立ってきて、コーラのアロマを焚いてるように、部屋全体がいい香りになりました。飲む前も香りを楽しめる!
材料は数種類のスパイス。私はシナモンスティック、カルダモン、クローブ、レモン、生姜、バニラエキスを入れましたが、好みに合わせて何種類入れてもいい。香りが時間ごとに変化したり(ちなみに深夜寝る前に煮立てましたが、リラックス効果も抜群でした)、味も好きなように調合できたりと、変幻自在なドリンクだと発見。また、作れると思わなかったものが作れて、自分の手ですごいものを発明したような気分になりました。「買うより、おいしい」は自分で作りたくなるモチベーションになります。

お裾分けでスイーツを。

農家さんがスケベ心でくれたイチジクを使って作ったパンなので、「すけべパン」。
生地はイチジクシロップとクルミを加えた、サクホロ生地。中はイチジクジャムとクリームチーズ。初めて作った割にはいい出来に仕上がりました。”

万能、自家製焼肉のタレ

”今夜は自家製焼肉のタレを仕込んでみました。醤油、酒、砂糖、りんご、はちみつ、ニラ、長ネギ、白ゴマ。ニンニク入れようか迷いましたが、今回は無し。こういうのを一気に作って冷蔵庫にストックして、自炊するときにサッと使うのが好み。”

創作おつまみ

”乾燥させたかぼちゃの種を煎っておつまみ。煎り過ぎました。子どものおやつになります。”

作り置きソースは万能

”お休みの日のお昼はパスタを食べる機会が多い為、夏の間にせっせとトマトを煮込んでソース作り。味付けは鶏ガラとウスターソースのみのシンプルに仕上げ、後で転用しやすいような味付け。”

タテ切り蓮根

”今夜は蓮根が手に入ったので、焼いて塩しただけのものを食べることに。
輪切りじゃなくて、タテに切ると食べやすいし良いよと聞いてからは、この切り方にすることが多い。”

5.食卓論


家庭、食堂、一人飯、友達の家、カフェ。食事をする場所は、どこだって食卓なのではないでしょうか。

カウンターも食卓

”カーボンフットプリント高めな食事ですが、久々にお店で尾道ラーメンをいただきました。5つカウンターあるだけの、東京初出店のお店。
食卓という話で言うと、家族の話をされがちですが、個人的にはカウンターのような、話はしないけど店員さんの顔が見えたり、隣の人の食べてる様子が見えるような、ゆるい共食みたいな場面も好きです。同じものを同じ場所で同じ時に食べるって、ゆるりとした縁を生んでいるようで。逆に、隣の人と喋ったらまた違ったご縁になりますが、このお店では、いい疎遠さの中に居場所も感じ、心地よさを感じました。

さておき麺もチャーシューもおいしかった。お店の中でチャーシューが1番カーボンフットプリント高そうですが、せっかくいただくならここまで美味しいチャーシューに調理してくれたら、それはそれでありがたいなあと豚さんも思ってくれるといいな(きっと思わない)なにはともあれ、最後まで美味しくいただきました。”

6.”いい”買い物

納得していいと思えるものを買う。そんな買い物には、買うときと買った後の満足感があり生活を豊かにしてくれます。思想に納得し、かつ頭だけでなく感覚も心躍るような、好いと思えるものを買う、そんなモノとの関わり方を増やしたいです。

放牧牛の牛乳

”講師の中洞さんが作る、なかほら牧場の飲むヨーグルトを買ってみました。納得して牛乳を飲めていなかった中で、初めていい牛乳を買い、思考と行動が一致した買い物。良いと思えて、かつ純粋に美味しく味わえました”


7.おいしい食事


「おいしい」「好き」そんな食事が増えるといいと思うのです。

巻き寿司は、旨味の塊

”海苔巻きは旨い。
海苔の旨みとご飯の甘みとおかずが複雑に混じり合って、「味の相乗効果」で乗せれば乗せるほどおいしい。こんなに自分好みにカスタマイズできて、みんな楽しく作れるごはん他にないのでは?だから巻き寿司や手巻き寿司が大好物なのです。”

8.季節

季節のものを、素材の味を楽しむこと。季節を感じるごはんって、いいですね。

野菜の旨味は満足感

”食べものと器が好きな友人に食事会に招いてもらい、前菜にキュウリ・ネギ・豆乳ヨーグルトのスムージーをいただきました。スペインのガスパチョのキュウリだけバージョンのような感じ。味付けはオリーブオイルと塩だけ。ネギの爽やかな辛みと、キュウリの香りと、豆乳ヨーグルトのまろやかさを感じます。そう思えないくらい、野菜の旨みを感じました。”

旬を逃さない

”桃は高くて手が出しにくい。でももう8月、桃の旬の時期が去る。今逃すと1年食べれないと思うと、無性に食べたくなり、食べ納めました。旬が一番。”

夏のゴーヤチャンプルー 

”ゴーヤチャンプルーを食べると、暑い夏の始まりを感じます。
我が家ではナンプラーを少し足らすのと、具材ごとに分けて炒めるのが工夫ポイントです。”

9.異国の食べ物

異国の料理を食べると、その国に行ったような気分になります。家で家庭の味を食べてほっとするのとは反対に、冒険的で刺激的な側面が食にはあることを再認識。時に食卓は、外の世界へと連れ出してくれる場になりますね。

中国の夏の風物詩・リャンピー

”近所の中華料理屋さんはほぼお客の9割が中国の方なので、お店の中では中国語が飛び交っていてなかなか面白いのですが、そのお店で以前から気になっていた涼皮(リャンピー)に初挑戦してみました。
というのも、リャンピーを注文しているお客さんがすごく多いので。でも味の説明が「辛味と酸味」しか書いてなくて尻込みしていましたが、やはり食べてみなくては!と挑戦してみました。
リャンピーは中国の夏の風物詩で、日本で言うと「冷やし中華」みたいな感じらしいです(お店の人の話)。作り方は、デンプンや米粉を水に溶き、蒸して作るそうです。私がいただいたのは長安のリャンピー。酸味は弱めで程よい辛味です。食感最高。こんにゃく麺と葛切りを合わせたような感じです。”

小皿いっぱいの韓国料理

”韓国料理屋さんに行きました。サムギョプサルを頼んだら、お肉だけでなく、気づけばテーブルがお皿でいっぱい。
スンドゥブとじゃがいもチップス、キムチ、最後はアイスクリームが「サービス」として出してもらい、韓国本場の空気を感じました。
お会計が終わると韓国海苔とサイダーとパックを手土産にもらい、サービス精神に感心。店員さんとも仲良くなり、祖父母の家で食事をしてお裾分けしてもらったような温かな気分になりました。食べ物を分けてもらうって、安心します。”

まとめ

いいと思う理由は人それぞれ。ちがう環境で、それぞれの感性が育まれ、異なる価値観を持った人たちが思う十人十色な食卓。いいと自分が思うことも大事であるし、他の人の”いい”に触れることで、自分の”いい”が広がると思います。

みんなの食卓には、その人らしさが写されます。料理の工夫の仕方、野菜の切り方も各々の好みや価値観などが映し出され、その人らしさが垣間見える食事は愛着が湧く。

実際私自身も、投稿された料理を見て、作り方を真似してみたり、同じ果物を買ってみたくなったり、食卓への考え方に共感したりし、食べることで他の人や外の世界に通じることができます。

思考し続けながらも、食べることを純粋に楽しめることは贅沢で幸せなことだな。
お腹が減りそうな連載になりました。


(好い食卓寄稿者:阿部志乃/かねこまみ/こじまめぐみ/玉木春那/萩原有希/平井巧/溝上和也/横尾祐介)

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玉木 春那 |  Haruna Tamaki
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