日常ブログ #41餡餅2
皆さん、去年私がこのような記事を書いたのを覚えておいでだろうか。
恐らく誰も覚えていないと思うので記事を添付させていただいた。
長々と2000字以上も書いているが、要約すると「地元のお祭り楽しみです」ということである。
夏。祭り。
そう、今年もやってきたのだ。
シャーピンの季節が。
餡に餅と書いて、シャーピン。
中国発祥のおやきのようなグルメ。
屋台などで売られているのを目にしたことがある人もいらっしゃると思う。
何を隠そう、実は私はシャーピンが大好物なのだ。
私の地元では毎年夏に大きなお祭りがある。
お祭り当日は駅前の商店街に屋台が立ち並び、浴衣姿のたくさんの人が行き交い、地味に過疎化が進んでいる地元とは思えないほどの活気あふれる賑わいっぷりを見せる。
そんな祭りの1番の目玉といえば、メインステージで行われるライブでもないく、空に高々と掲げられた立派な吹き流しでもなく、その一角で売られているシャーピンである。
どういうわけだか、ここの屋台のシャーピンはヤバウマなのだ。
お祭りの雰囲気ブーストがかかっているのかもしれないが、それを差し引いても美味しい。
真夜中でも食べたい。
私が祭りに行く時、それ即ち、シャーピンを食す時である。
シャーピンの屋台はいつも同じ場所に出されている。
商店街をくいっと行って十字路をピョッとしたところだ。
地元祭り歴二十数年の私の知る限り、シャーピン屋さんは必ずそこに屋台を出す。
間違いない。
そして私の知る限り、祭りが開催している限りシャーピン屋は必ず出店する。
田舎の伝統ある祭りというのは出店する方も遊びに行く方も筋金入りのガチである。
だから今年は、わざわざ祭りのために帰省して、熱中症対策のフル装備で向かうというガチガチさで臨んだ。
一年待ったシャーピン。抜かりはない。
いかに包み袋の下の方に溜まったたれをこぼさないように食べるかというシミュレーションも完璧である。
しかし今年は大きな懸念点があった。
毎年祭りは日が沈んで暗くなってからのんびりと参加していたのだが、その日はやむを得ない用事があったため午前中の参加だった。
そこに今年の異常な暑さである。
シャーピンの待つ商店街をくいっと行って十字路をピョッとしたところは、祭りロードの始まりである駅前からはかなり距離がある。
目下の目標は、シャーピンの屋台まで倒れずに到達することであった。
帽子を被り、日傘をさし、凍ったペットボトルを小脇に抱え、私、母、姉で構成されたシャーピン食べたい部隊は祭りロードへと踏み出した。
暑さ対策のために真昼間を避けて開幕間もない午前中を狙って来たものの、策を無効化する圧倒的猛暑。
アスファルトから跳ね返る日差しの熱がじりじりと体力を消耗させる。
加えて土曜の午前中だってのにビシッと浴衣で決めた若者がいっぱいいる。
朝から溌剌としている。
その眩しさにじりじりと心が焼かれる。
週末の午前なんていつまでもグダグダしていたいのに。
だが、どんなことがあろうとも歩みを止めてはいけない。
一歩一歩、堅実に、愚直に、シャーピンへと近づいていくのだ。
道中、かき氷、ハンギョドンのお面、くまさんカステラ、さすまたのクッション、ハンギョドンのお面、カルピスのバルーン、ハンギョドンのお面など、様々な誘惑にあった。
しかし、出発直前ギリギリに起床したために食べ損ねた朝ごはん代わりのタコスを除いた、全ての誘惑を断ち切り、我々はシャーピンへと一直線で向かった。
暑さに負けず、人混みに負けず、微妙な地元の知り合いに出くわす恐怖にも負けず、ついに辿り着いたのだ。
商店街をくいっと行って十字路をピョッとしたところに。
そこにシャーピンの屋台は、あった。
白地に「餡餅」の文字を確認。
いつものテキ屋さんだ!
逸る気持ちを抑えられず、私は屋台に向かって小走り出した。
灼熱アスファルト地獄と歩いて来た疲れなど今は知らない。
ただそこにシャーピンがある限り、買って、食べる。
それが、宿命なのだ。
だが、そこにシャーピンは無かった。
なんとまだシャーピンが一枚も焼き上がっていないではないか。
想定外の事態だ。
我々の体力と天候を考慮して、より安全に、確実に餡餅を購入できるように立てた策が裏目に出てしまったのだ。
テキ屋のお兄さんはまだ鉄板にあっためてすらいなかった。
粉を取り出し絶賛下準備中だった。
この余裕。
この落ち着き。
開幕に合わせて開店しなくても昼過ぎからウチはガンガン売りますよという気概。
そういうところも好きだ。
だが、シャーピン、食べられなかった。
こんなに楽しみにしてきたのに。
わざわざ東京から帰って来たのに。
タコスでは満足できない。
私はもう心も口の中もシャーピンになってしまったのだ。
シャーピンじゃなきゃだめなのだ。
ここでできるのを待つか?
それは無謀だ。
お兄さんがシャーピンを焼き上げる前に我々が日差しに焼き上げられてしまう。
今は去る他にどうしようもない。
退散だ。
悔しいけれど、今回のところは退散だ。
お祭りに来れる日は今日しかなかった。
それでも命には代えられない。
そうして、我々はシャーピンを買って食べるという目標に敗れ、帰りにハンギョドンのお面を買ってからの帰宅を余儀なくされたのだった。
今年は大好きなシャーピンを食べられなかった。
シャーピンの無い夏。
シャーピンの無い一年。
シャーピンの無い未来。
に、なるかと思いきや、実はまだ続きがある。
例のやむを得ない用事で夕方に出かける前に、商店街をくいっと行って十字路をピョッとしたところの近くに車を止めて再度シャーピンの屋台に行ってみたのだ。
そのには、あった。
焼き上げられた、外カリっ中もちっの、熱々シャーピンの山が!
即買った。
食べた。
超絶美味しかった。
いつもだったら適当なところで立ち止まって道端でむしゃむしゃ食べるのだが、車の中で食べるのもまた趣があってとても良いものだ。
今年のシャーピンはシャーピンでもカーシャーピンである。
特別な美味しさなのである。
世界よ、ありがとう。
こんなにも美味しいシャーピンを食べさせてくれて。
路駐してくれたお母さん、テキ屋のお兄さん、シャーピン、そして地元。
みんなみんなありがとう。
ギリギリ滑り込みセーフの大どんでん返しで、今夏最大のミッションをコンプリートした。
これを食べなきゃ私の夏は始まらないし終わらない。
2024年の夏も無事シャーピンできて本当に良かった。
来年もシャーピンできるように、また一年頑張ろうと思う。
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