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06月共読本:52ヘルツのクジラたちを読んで

紺碧(こんぺき):やや黒みを帯びた青色

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貴湖の家の窓から見える海の色、紺碧。
52ヘルツのクジラたちが今回の共読本に選出される前から、深みのある装丁の青色は本屋で目を引く存在であった。この色はクジラたちがゆっくりと共鳴しながら泳ぐ深い海の色をイメージしたのかなぁと思うと、いくらでも眺めていられる色だ。

本編はあらすじからなんとなく察してはいたけれど、とにかく重い……重い以上の言葉を選ぶ気力が残っていないほど重いお話だった。もうこれよりもしんどくなることあるの?とファミレスの窓から夜空を見上げながら読み進めたら更にしんどい泥沼展開になったりした。
愛憎のあれやこれやで人間関係と己に絶望した貴湖(と愛)が、田舎のTheおせっかいに救われる展開。場合によっては、分かりやすいハッピーエンドに落ち着くのかーと興醒めしそうだけども、そこに辿り着くまでがとんでも山あり谷ありエベレストだもんで、素直によかったねぇと受け入れられる自分が意外だった。これもまた偽善なのかもしれないが、結局は、人は1人で生きられないというのは真理だ。

2022年から本格的にエンタメの感想記録を始めて2年目になる今年。本や映画で心が揺れ動き、新しい視点から世界を覗き見て、感想を咀嚼する時間もまた、心の中に水を注ぎ入れる活動のひとつかもしれない。ぽちゃんぽちゃん。

海にインクを垂らせば薄まって見えなくなってしまうように、心の中にある水が広く豊かに、海のようになれば、滲みついた孤独は薄まって匂わなくなる。そんなひとはとてもしあわせだと思う。

文庫本p60

心の海を広げ合える関係性を大事にしていきたいものです。水は注ぎ注がれるバランスが崩れると渇いて溢れて崩壊する。むずかしいね。

2024年の映画化は主税のキャスティング選手権大会が楽しみで仕方ありません。ここまでシンプルに映像化を心待ちにできる小説ははじめて出会ったかもしれない。

それから、文庫カバーの裏面にスピンオフが付いていること、読み終わりで人に貸す直前に気が付きました。
シャレオツ装丁に心踊る瞬間もよきものです。

心の筋トレ共読本、07月は早めに読むぞ!
お付き合いいただき、ありがとうございました。

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