Phantom
あらすじ
外資系食料品メーカーの事務職として働く元地下アイドルの華美は、生活費を切り詰め株に投資することで、給与収入と同じ配当を生む分身(システム)の構築を目論んでいる。
恋人の直幸は「使わないお金は死んでいる」と華美を笑うが、とある人物率いるオンラインコミュニティ活動にのめり込んでゆく。 そのアップデートされた物々交換の世界は、マネーゲームに明け暮れる現代の金融システムを乗り越えゆくのだ、と。
やがて会員たちと集団生活を始めた直幸を取り戻すべく、華美は《分身》の力を使おうとするのだが……。
金に近づけば、死に近づく。高度に発達した資本主義、その欠陥を衝くように生まれる新たな幻影。羽田圭介の新たな代表作。
感想
『お金』というものを様々な視点から感じ考えさせてくれる作品。
『三千円の使い方』に似た側面がある内容だけれど、お金よりも信頼が大切というカルトじみた集団が登場することによってまた違った魅力のある内容だった。
情報過多な世の中のせいなのか過去の出来事を知らない人たちがオンラインサロンにのめり込んでしまい、側から見ればカルトじみた集団が生まれてしまうという流れも、現代的で実際に起きているような出来事なんだろうなと感じさせられた。
また、個人的に株式投資を最近始めたので、より主人公に感情移入し読む事ができ、大金を投資している登場人物を生活保護受給者に例えてみたりした箇所には、投資にのめり込むのも一種の宗教のようなものなのかの知れないなと思った。