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ブラックボックス

あらすじ

 ずっと遠くに行きたかった。
 今も行きたいと思っている。
 自分の中の怒りの暴発を、なぜ止められないのだろう。
 自衛隊を辞め、いまは自転車メッセンジャーの仕事に就いているサクマは、都内を今日もひた走る。
 昼間走る街並みやそこかしこにあるであろう倉庫やオフィス、夜の生活の営み、どれもこれもが明け透けに見えているようで見えない。張りぼての向こう側に広がっているかもしれない実相に触れることはできない。

感想

 本作で描かれている主人公と同世代であるので、日々感じている悩みや葛藤をここまで生々しく描かれてしまうのかと、恐ろしさと感銘を同時に感じた。
 前半部分は、物語としては単調かなと思いつつも描写や着眼点の面白さで読み進めていたけれど、後半からの急な展開にしばらく頭がついていかず理解をするのに時間を要してしまった。ただ、どちらの側面もそれぞれが魅了的で、飽きを感じさせる間もなく読み切れる作品だった。

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