見出し画像

青い星はゆらめく #シロクマ文芸部(620字)

星が降る夜だった。

私はいつものように夜空を見上げて「オリオン座が見えるよ」と彼に言う。彼はいつものように私のそばに来て、窓辺で一緒に星を眺めた。

星がひとつ、きらりと流れ落ちるのが見えたから 私はあわてて外に出る。むこうの空き地が淡く光っていた。

光っている場所にそっと近付くと、星がシューっと音をたてて燃えていた。青く 冷たそうに ゆらめいている。

「……かみさま」

つぶやきながら、地面に落ちた星を手に取る。
ビー玉のようなコロンとした塊は思いのほか重く、あついのか つめたいのか、よくわからない。でも持っていると手がどんどん溶けて形を失っていく。腕がなくなるのも構わず必死で星を見つめると、青いゆらめきのなか誰かと目が合った。

「かみさま」

堪らず声になった音は、自分が思ったよりずっと大きかった。

「かみさま、かみさま」

叫ぶように、祈るように、願う。

「かみさま、返してください」
星は ただゆらめいている。

「かみさま おねがいします」
星は じっとゆらめいている。

「……かえして」

最後の言葉はかすれて声にならなかった。その言葉を聞いてか聞かずか、星の光も消えていく。青い光が黄色から赤に変わり、やがて小さい打ち上げ花火のようにパチンと弾けた。

それを見たら 急に泣きたくなった。わんわん泣きながら家に帰ると、彼の姿は見えなくなっていた。

こんな日は、あたたかくして眠るのがいい。深く深く眠れたらいい。泣いて眠って朝になったら、この気持ちは夢に置いて帰ろう。


 
こちらの企画に参加させていただぎました🙏

私事ですが、昨年からNHKの『チ。』というアニメを視聴しています。家族には不評だけれども、私はあの全体的に画面が暗くて閉鎖的で抑圧されたなかで、人間が行き着く哲学やロマンにものすごく惹かれる。きゅん。
そしてヨルシカの『アポリア』をエンドレス再生している。

歌詞だけ見ると全く泣ける感じでは無いのに、歌を聴くと『この夢があの日に読んだ本の続きだったらいい』あたりで泣けてくる。この気持ちは何だろうなぁと、いつも思います。ふしぎ。
この気持ちを元に 何か書けないだろうかと考えたのですが、最終的に別のものが出来上がりました。そりゃそうだ。ぎゃふん。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

いいなと思ったら応援しよう!

玉三郎
お読みいただき、ありがとうございました☺️