12ヶ月の色彩事典 11月 紫みの青 : 瑠璃(るり)色 / ウルトラマリン
冬の始まりである11月は、実はさほど寒くなく安定した気候の過ごしやすい月です。チャレンジの秋の疲れを癒し、師も走る年末に向けての体力温存のためにも静かに過ごすための月かもしれせん。
青は、空や海、遠い山々など遙かな広い背景の色。目先の雑事から離れて広く冷静な心を保つことを助ける色です。澄んだ空気の中で更けゆく空をただ眺められるのもこの時期だけの贅沢なひとときです。
瑠璃色はそんな冷静さに加え、次に来たる月の華やぎの予感を秘めた青です。
瑠璃はラピスラズリの日本名で、古くから仏教の七宝のひとつとして珍重されています。「ラピス」はラテン語の石、「ラズリ」はアラビア語の青色のもの(特に空の色)を指すアラビア語が語源。「ラズリナス」という色名もラピスラズリのことです。ラピスラズリは、青の顔料にもなりました。
中近東からヨーロッパに“海を越えて来た色”という意味の「ウルトラマリン」とよばれ、そのウルトラマリンが聖母マリアの肖像の衣を彩ったために「マドンナブルー」ともよばれるなど様々な色名があります。
洋の東西、宗旨を問わず高貴で聖なる色だったのです。
ローマ時代頃から中世頃までラピスラズリを薬として用いていた記録があります。時代や学者によってそれぞれの薬効を述べています。共通していることは「熱さまし」「感情を抑える」で、現代の色彩学の「青は寒色で鎮静色」に通じます。実際の薬効はさておき、青い色を見て感じるものは今も昔も同じですね。
秋のディスプレーやイメージカラーは、茶系を中心とした渋い色みが多く、この頃にはやや食傷ぎみではありませんか。そこでさり気なく他と差をつけるために、反対色の瑠璃色をアクセントカラーにあしらうのはいかがでしょう。それこそラピスラズリをつかってもよいし、手軽に瑠璃色のポケットチーフや時計のバンドでもよいでしょう。ほんの小さな面積にとどめるのがコツ。地味すぎない落ち着きと、派手すぎない華やかさを上品に演出できます。