まだ誰も見たこともないカタチを創造する伝統と先端 secca inc
武蔵野美術大学大学院 クリエイティブリーダーシップコース クリエイティブリーダシップ特論Ⅱ 第12回目 2020/08/03
secca inc(株式会社雪花)の代表取締役 上町達也さんにお話を伺う。
secca 雪花 とは
"食と工芸の街、金沢を拠点に所属する
「職人」と「アーティスト」と「デザイナー」が
それぞれの長所を活かし、
長く受け継がれる伝統から
最先端のテクノロジーまで、
古今東西のあらゆる技能を用いて
新しいものづくりをするクリエイター集団。"
上町さんは金沢美術工芸大学卒業、大手メーカーとしてデザイナー経験後、金沢にてsecca を立ち上げられる。
工芸を最新の技術でアップデートした今までにない美しいアートワークを創造し、地域のレストランへの器の納品から、店内を彩るアートピースの制作から楽器の製作まで手がけられている稀有な存在である。
思考としてのデザインと技術のものづくりで作らていく中で、素材の選択から加工法についても伝統のわざとデジタルテクノロジーを巧妙に組み合わされたこだわり美しい作品を生み出されている。
立ち上げまでの経緯
新製品のデザイン開発、発売前にも関わらず、1年後に価格が絶対下がるから、表面だけを変えた加飾をした次期モデルを作って欲しいと言われ、
そこでそのやり方に疑問を持ったそう
その頃3.11が起こり、みんなが安全な食を求め始める。しかし、そういう大きな事件がないと、生命の根幹である食の大切さにすら気がつかないなんていう社会では、ものの価値を考えるセンスっていうのが失われるのではないか、良い価値が残っていかないのではと危機感を抱く。
初めは食に関わろうとドラスティックにキャリアチェンジを考えられるが、自身の経験と得意な領域で求められることがあると気がつき、食に関わる工芸のものづくりとして活動を始められた。
ビジネスの経験もなく、ものづくりのデザイナーの経歴から想いだけで事業を立ち上げようとしたため、相談相手が必要であった。
その際、古今が美しく調和された町、金沢に移住して、既に拠点を移し事業を始められていた師匠に出会い、上町さんご自身も学生時代を過ごした金沢に移住されたそう。
自社R&Dで開発にこだわり、外資に頼らず、自分たちの実験を進め、
B to I Business to Individualの時代に大量生産では実現できない固有の価値を生み出すという領域で勝負されている。
店で使うものは大量生産品ではない、固有のものが欲しいという個別のオーダーがレストランなどから増えているそうだ。
また価値の発信は、自分たちだけの価値観の発信ではなく、
周りの人とのセッションで掛け合わせることで生み出していくスタイルを大事にされているそうである。ある料理人の料理とsecca器の共演によって異なる価値観から新しいコンセプチュアルな作品が生み出されている。
また本物、偽物についての言及もとても興味深い。
議論の題材になるようにあえて製作された作品では、小文字のjapanは漆を表すが、本物日本製の漆、中国製の漆、ウレタンの3種類が3つのパートにそれぞれ塗装された作品では、見た目には同じに見える。
しかし、本物とはどういうことか。
日本社会では一般にプラスチックは偽物だという印象が根付いているが、果たして何が本物と偽物と言えるのだろうか。
使い捨てられる容器としてのプラスチック、おままごと用にプラスチックで作られたおもちゃの包丁など、印象として感じる偽物感は、人が感じているだけであって、地球上に存在している物質としては、木も石も樹脂も真偽の区別はないのではないか。
最近では生分解性のある樹脂も開発されている中で、果たして素材を選ぶ基準も、プラスチック、人工物だから悪というような安易な価値判断はアップデートが必要なことかもしれない。
何が本物で何が偽物か、明確な答えはないが、議論を続ける必要があるテーマであると示唆を受けた。
これからのサステイナブルな社会造形に置いてとても重要な観点であると感じるお話であった。
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