見出し画像

腎盂腎炎になって死ぬことを覚悟した話

始まりは8/4の午後だった。
唐突な頻尿が始まった。
その日は犬も体調を崩していて、夕方から私が動物病院につれていく予定だったのだが、あまりにもトイレが近いために犬は夫に託して私はトイレに籠もっていた。
ちなみに犬は熱中症だった。

その日のうちに膀胱炎用の市販薬を買ってきてもらい、数日服用したが、飲み終えるとまた悪くなってしまい、3日おいて改めて市販薬を服用し、それでもだめなら病院に行かなければならないなと思っていた矢先の8/14(日)未明、高熱が出た。
午前2時半頃だったか汗だくで目を覚まし、熱を計ると38.2℃だった。熱の割にまだ動けたので、汗が気持ち悪いと感じていた私はシャワーを浴びた。
念の為抗原検査をしたほうがいいと考えたのだが、備蓄しておいた抗原検査キットの場所がわからないので仕方なく夫を叩き起こした。
陰性が出たが、これは研究用の検査キットだったので、正直あまり当てにしてはいけない。
喉も痛くないし嗅覚異常もない、咳もないが熱だけはある。
念の為オンライン診療ができるクリニックを探したものの、このタイミングでは近隣で空いているクリニックがなく、仕方なく隣の隣の市にあるクリニックに火曜日に予約をした。
何故か翌朝になったら、近隣のクリニックがオンライン診療の予約できるようになっていたので、そちらに予約を変更したのだが。

しかしコロナでは嫌だなあと思っていたので、翌日夫がかかりつけの調剤薬局に電話をして医療用の抗原検査キットを買ってきてくれた。
これも、陰性。
なんだか嫌な予感がしてきた。
膀胱炎様症状もあって、高熱である。
インターネットで調べると、腎盂腎炎が出てきた。
どうやら放っておいて治るようなものではないらしい。
そもそも膀胱炎自体が初めての経験だったので甘く見ていたが、まさか悪化するとこんな病気になってしまうとは知らなかった。
はじめましての病気である。
自分がどのような経過を辿るのかもわからないが、病院にアクセスできないと死んでしまうかもしれない。
今、この時期にである。
ほんの一ヶ月前、夫がコロナになっていた。
発熱外来は電話がパンクしていてどこも繋がらなかったが、幸い症状が軽かったため、医療用の抗原検査キットの陽性判定をもって、オンライン診療を受診するだけで事なきを得ていた。
が、私は高熱が出ていた。
8/14のお昼前、悪寒戦慄が始まりこの真夏に毛布と夏掛けと冬用の掛け布団にくるまってガタガタと震えていた。
この時点で熱は39.6℃であったが、熱が上がりきってしまえば下がるだろうと思っていたので、まだ精神的に余裕はあった。
確かに上がりきったあと、スルッと38.7℃まで熱は下がっている。
だが問題はここからである。
下がったはずの熱が下がりきらずにまたしても悪寒戦慄が始まってしまったのである。

さすがに私もおかしいと思い、翌日には病院に行ったほうが良いのでは…と思い始めた。
しかし悲しいかなお盆休みである。
かかりつけはどこも開いてないのだった。
とりあえず火曜日に予約はしてあるし…と、そこまで頑張るしかないと思い直した。

ところが8/15(月)早朝、とうとう40℃の熱が出た。
今までインフルエンザでもカンピロバクター腸炎で入院したときも40℃になったことはなかった。
昔のホームページ的に言えば、New!→40.0℃だろうか。
これはやばいと思った私は、行政がやっている7119とやらに電話をしてもらった。
そこで4軒ほど発熱外来の病院を教えてもらうことができたが、悲しいことにどこも電話がパンクしていて繋がらなかった。

ここで私は死を覚悟した。
病院に簡単にアクセスできていたことがどれだけ有り難いことだったのかも痛感した。
とにかく死を覚悟したらまず、サブスクを切らなければならないと思い、契約していたサブスクを全て解約した。
意外と静かな気持ちだった。運が悪かったんだな、くらいにしか受け止めていなかった。うちは夫婦二人世帯なので、遺言書は書いてある。エンディングノートは途中だったが、それについてはもっとちゃんと書いておけばよかったかなぁとなんとなく反省した。
しかし強く思い残すことはやり残したゲームもったいないな、くらいだった。
ここでも馬鹿みたいにオタクである。

ところで予約してあるオンライン診療だが、病院にいかなければならなくなった場合、電話で予約を取り直さなければならないとのことで、仮にオンラインで受診しても実際に見てもらえるかわからない。
腎盂腎炎であれば尿検査は必須だとインターネットを徘徊していて知識を得た私は、実際に検査をしてもらうにはどうしたらいいか悩んだ。
そこで思い出したのが、ファストドクターだった。
アプリは入れていたが登録はまだだったので即登録を済ませ、往診の受付ができるかどうかを確認すると、なんと60分〜70分待ちで受付をしていた。
ここが分かれ道だったと思う。すぐに受付の申込みをし、暫くして看護師さんから電話で問診をされ、その後ドクターから往診に応じてもらえるか判断してもらうという。
ファストドクターは尿検査もできるというので尿検査もお願いした。
ホッとして夫と待っていたが、看護師さんから再度連絡があり、尿検査の機械が私の住んでいる地域に持っていけないとのことで、尿検査はできなくなってしまった。
往診自体どうされますかと聞かれたが、とりあえず問診でも構わない、とにかくドクターに診てもらいたいという一心で、往診はお願いすることになった。
待つこと30分ほどで、往診に来てもらえると連絡があった。
ドクターから電話があったのは23時頃で、やはり腎盂腎炎を疑われていた。
「とにかくコロナかどうかハッキリさせましょう、ただし陰性だったら恐らく腎盂腎炎なので必ず明日大きな病院に行ってください!」
と力強く言われた。
ドクターが到着したのは0時近かったと思う。
まずPCRを受けさせられ、陰性だった。
関係ない話だが、鼻の粘膜ぐりぐりされるのって本当に痛い…久しぶりに涙出た。
そして、問診のあと左の腰の後ろ辺りを軽く叩かれ、軽い痛みが走った。
どうやら腎臓の位置とのことで、ほぼ腎盂腎炎確定だと思うとのこと。
ただし、腎盂腎炎は尿検査や血液検査、場合によってはCTを撮った上で評価しないと腎臓をボロボロにしてしまう可能性があるので、念の為抗生物質は置いていくが、病院で検査を受けてから飲むのが一番だと言われたので、薬は飲みたかったが我慢することにした。
そして、ドクターは紹介状を書いてくれた。PCRもしたうえで陰性なので発熱外来に電話する必要はないこと、すぐに受診できる入院設備のある病院に行くこと、どこも断られてしまったら救急車を呼ぶことを私に言い含めて紹介状を作り、またどこかの患者さんの家へ向かっていった。
往診とはかくも有り難いものなのか…と、生まれてはじめて往診を受けた私は思った。

余談だがドクターがいる間飼い犬がパニックを起こして夫が必死でなだめていたが、寝る直前まで犬がパニックを起こしていてなかなか大変であった。

そして8/16(火)である。
一番近い総合病院は代表番号が発熱外来受付のため、恐らく30分以上は繋がらないと判断した私は、二番目に近い総合病院を狙うことにした。
発熱外来はあるらしいのだが、整理券制だということで、電話がパンクしている可能性は低いだろうと考えたのだ。
その読みは当たり、少しだけ時間はかかったものの5分以内に電話は繋がり、すぐ受診していいと言ってもらうことができた。
おかげで無事に泌尿器科にかかることができ、CTも撮ったが左の腎臓が一回り大きく腫れていた。
血液検査も、尿検査もなかなかひどい数字だったが、必死で水分をとっていたせいか脱水は免れており、即入院とはならなかった。
ファストドクターが処方してくれた5日分の抗生物質にプラスで抗生物質の処方箋を出し、金曜日までに熱が下がらなければ即入院になるので様子を見てまた来院するように言われた。つまり病院に鎖で繋がれている状態だということである。
ドクターは何故かとても嬉しそうに、
「昨日処方されてる薬とってもいい薬だからね!すぐに飲んでいいからね!」
と笑顔で言っていた。なんだかつられて嬉しくなってしまったので診察室を出たあとすぐ抗生物質を飲んだ。
私はつくづく単純である。

その後は抗生物質がよく効き、3日ほどで解熱した。
さすが抗生物質、漫画はたらく細胞ではロボットのように描写されているだけある。
特に私が処方されたのは直で菌を殺すタイプの抗生物質だったので、原始的な戦いをしてる白血球の中にガンダムが送り込まれたようなもんである。
そら強いわ…と、夫婦二人でわけのわからない例えで納得していた。

予後の再診も問題なく、また繰り返したらすぐ来るようにとは言われたものの、今のところその予兆はない。
再診で驚いたのは、私は全然耐性菌がなかったということだ。どの抗生物質もよく効く状態らしい。
今まで受診してきた病院で、予防のための抗生物質が、ほとんど出てなかったんだなあとしみじみと思った。

さて今回学んだことは、膀胱炎は即病院に行ったほうがいいということである…。
市販薬でなんとかできるものなのかと思っていたが、私の体のコンディションもあってか一気に腎盂腎炎まで進んでしまった。
こんなに辛いものになってしまうと知らなかったが、本当に辛かった。
嘔吐下痢がないので脱水にならず良かったものの、水分をとれていなかったらと思うとゾッとする。
このご時世、体調になにか変化があったら、前兆の時点で即病院に受診することが必要だなと思った。
悪化して発熱外来を通さないといけなくなったら最後、受診が難しくなる。
受診できないので死にかける。
そのことを心の底から痛感した出来事だった…。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?