私の祖母は毒母の被害者だった
祖母は生きていたら88歳。
お洒落が大好きで、化粧品もデパコスを好み、いつもきれいにパーマを当てたグレイヘアをセットしていた。
祖母はいつも私の味方だった。
それは祖母が母親との関係で辛い思いをしてきたからだった。
祖母の実家は、元々は大きな商家だったらしい。だが、従業員にお金を持ち逃げされ、一気に家は傾いた。
祖母が物心つく頃には、小さな長屋で親子5人肩を寄せ合って暮らす生活だった。
当時、祖母たちは姉妹だった。祖母は次女。元々は長男がいたそうだが、夭折してしまっていた。
その分曾祖母の期待や愛情は長女に向いた。
ことあるごとに祖母は長女と差をつけられて育った。
決定的だったのは、長女は女学校に進学させ、次女である祖母は進学させてもらえず公務員となったことだった。
それでも就職先の仕事に馴染み、その仕事が好きになった祖母は幸運だったのかもしれない。
流行り病で入院し、入院先で恋人と呼べる人もできた祖母は、その人と結婚するつもりだった。
それを壊したのは曾祖母だった。
祖母は当時の感覚からしたらいき遅れていた。29歳になっていた。
ある日突然曾祖母が持ってきた見合い話を受けることになった。恋人とは別れさせられた。
確かにそういう時代だった。
そして、祖母は不運だった。相手をひと目見て、この人は嫌だと直感するような相手だった。
曾祖母自身も、この相手は良くないと思いはしたらしい。だが、結婚は嫌だと泣く娘に、「お前は私の顔に泥を塗るのか!」と罵声を浴びせた。
祖母はその言葉に、自分の気持ちをすべて飲み込んだ。
祖母は結婚した。私の祖父となる人と。
小心者で屈折した、アルコール中毒の男と。お酒を隠しても隠してもどうやってか見つけてしまうどうしようもない男と、祖母は祖父が死ぬまで添い遂げたのだ。
昔自分がされたように自分の娘に呪いと毒を与えながら。
私の祖母は毒母の被害者だった。
そして、祖母は母にとっての加害者になった。
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