【482/1096】なるべく写真を撮る
なるべく写真を撮っていた
家族の 子どもの写真
その時しか取れず
今は今しかないのだから
出先で日常で
なるべく写真を撮ってきた
そのおかげで
今 残っている写真たち
きみが大きくなるにつれ
写真はへる
ともに出かけることもへる
もっと撮ればよかったとか
今さらだから
これからも撮るだろう
グーグル先生のおかげで
スマホを変えても写真は引き継がれ
どこまでも遡れる
ありがたい機能
たまの思い起こし機能で
きみの楽しい頃の写真があがり
落ち込むことも減った
今はすこし前よりも
きみの昔の笑顔に
対応できるようになった
悔やむばかりでなくなった
ただの日常の写真が好きだ
わたし以外のみんなが
写っている写真が好きだ
わたしの眼は
その日にその時の気持ちに戻れる
あの時のことを鮮明に
思い出せる
甘い思い出
みな嫌がらず
振り返ったり並んだりして
写真を撮らせてくれた
そのみんなの姿がわたしの
宝物だった
だからいつもわたしが
撮りたかったの
きみたちは宝物なんだよ
ときに後ろ姿を隠し撮りしたりして
ああ この瞬間が
ずっと続けばいいのになって
願っていたよ
このときを忘れないようにしよう
ありがとうって思っていたよ
きみの亡骸の写真は
撮らなかった
撮れなかった
残したくなかった
今は脳裏にも残っていない
わたしの記憶から
どこかへ消し去られた
そのうち 思い出すかもしれない
きみの可愛かったころ
笑っていたころの顔を
思い出せるようになった
思い返しても悲しみだけに
ならなくなってきた
それはどういうことなのか
死を受け入れたのだろうか
だっていないもんね
帰ってこないもんね
写真だって更新されないもんね
パソコンを使えば
合成できるのかもしれないけど
それじゃなんの意味もないもんね
きみはもういないんだって
残っていく写真を見て
また改めて思う
家族の写真を撮るときに
ひとり足りない宝物を
目の当たりにする
わたしはなにを思えばいいのか
きみの不在の穴は
ずっとふさがらない
どんな人にもものにも埋められない
生傷でなくなるだけで
穴は消えない
悲しみとかで表現できないから
みんな困っちゃうんだよ
この穴の名称はなんなんだろうか
宝物は欠けた
でもゼロじゃない
だからこれからも写真を撮る
忘れてしまった時の
思い起こしにも役立つし
毎日の感動を残しておきたい
ああ こんな日もあったなと
思い返したい
思い出はなくならない
忘れてしまうだけで
なくなったりしないんだ
だから 覚えておきたくて
写真を撮り続ける
きみもたまには写り込んでいいんだよ
きみだったら
わたし達は怖くない
今日もありがとう
残された者の日々