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空想お散歩紀行 遠隔生活と不動女子高生

「ありがとうございました!」
店員さんが深々とお辞儀をするのを見ながら、私はお店を後にした。
「えーと、服は買ったし、アレもアレも買ったから、と」
買った物を確認。特に忘れ物は無し。
「ま、何かあったらまた来ればいいか」
私は目を閉じる。そして、
「よいしょっと」
頭からゴーグルタイプのヘッドセットを外した。
先程までのショッピングモールの風景が一瞬にして見慣れた自分の部屋へと戻る。
今まで私がいたのは、VRで作られた空間。
私が通っている高校のあるケルト市の街をほぼ再現したその空間にダイブして、ショッピングを楽しんでいた。
今日買った物は当然今手元にあるわけではない。後日配送されてくる。
「ネットだから、ケルト市じゃなくて市外どころか世界中どこにも行けるけど、やっぱり行き慣れてるところに行っちゃうなあ」
今や、世界中の至るところにVR設備は整っている。外国のスイーツとかいつでも買いに行けるのに、結局近場のお菓子屋さんで済ませてしまうのは、やはり種族の特性というやつだろうか。
私たち、スケアクロウ族は生まれた土地から離れることがほとんどない。
私も基本自分の家から出ることは無い。
でも今の時代は技術の発達のおかげで、家にいながらほとんどのことができる。
学校には私専用の端末が置かれていて、それを通して授業も受けられるし、友達とも話せる。
休日も友達と端末を使って話せるし、VR空間に出れば、買い物も映画館で映画を観ることも、生身とほとんど変わらない感覚で体験することができる。
ネットは家から出ない私が世界と繋がることができる最強のツールだ。これのお陰で学校では情報通としての立ち位置を確固たるものにしている。
「昔のスケアクロウはどうやって生きてたんだろう・・・」
ネットのない時代は一日中空でも眺めながら暮らしていたのだろうか。
そう考えると今の時代に産まれたことに感謝以外ない。
だが、どんなにVRでいろいろな体験ができるとしても、それはほぼ本物、リアル風、であって決して本物ではない。
学校でも体育の時間は私は皆をただ見ているしかない。バスケの試合で得点が決まって、ハイタッチをするクラスメイト。
あれが私にはできない。どんなに言葉で近づくことができても、触れ合うところまでは行かない。
もしかして、私の学校生活も、友達との関係も、全ては本物風であって決して本物ではないのではないか。
そんな不安をつい、この間友達に話してしまった。
そうしたら・・・
ピンポーン
家のチャイムが鳴った。今日は初めて友達が私の家に来てくれる日だ。
毎日のように会っているはずなのに、少し緊張しながら玄関へと向かった。

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