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空想お散歩紀行 魔法の裏側

「エリア448で大規模魔法申請!」
「現在光属性魔法経路に遅延発生してます!」
「召喚魔法のドラゴンのアサイン遅いよ!どうなってんの!?」
人間の魔法使いは、簡単に魔法を使えると思っている。火の魔法を使えば火が、水の魔法を使えば水が、当たり前のように出てくると思っている。
しかし、実際はそうではない。
魔法はこの世界のあらゆるところに存在すると言われる精霊の力を借りることで顕現する。
だが、精霊の力を借りるには、精霊語で精霊に依頼を出す必要がある。
ところが、人間には精霊言語を理解できる者はいない。そして同様に精霊の中にも人間の言葉を理解できる者はいない。
ではどのようにして人は精霊に力を請い、精霊は人に力を貸し与えるのか。それは・・・
「承認下りました。発動します」
「レベル5の結界魔法の新規申請入ります」
ここにいる言語を司る精霊たちのおかげである。
人間が呪文を唱える。するとそれが言語精霊たちによって精霊言語に変換され、各種精霊に伝達される。そして精霊たちからそれらに応じた力を発動させるコードを受け取り、人間に魔法を発動させる許可を出す。
人間にとっては魔法を使う時間は一瞬のように思えるが、その裏では実はこれだけのことが起こっているのだ。(言語精霊の世界の時間と人間の世界の時間の流れは違う)
「ああもう。最近魔法申請多すぎじゃない?」
言語精霊の一人がぼやく。
「ああ、どうやら人間と魔族の戦争が始まったらしいよ」
「げえ、まじで?」
「もう炎魔法と水魔法のセクションは悲鳴あげてるよ」
「使い手が多い魔法のとこは大変ね」
「でも、戦争なんだろ。今回でたくさん間引かれれば今後の負担も減るだろ」
基本、精霊と人間の価値観は違う。この戦争とやらでどちらがどれだけどうなろうと特に興味はなかった。興味があるとしたら今後の自分たちの仕事量だ。
「あ~あ、しばらくは有給取れないかな」
「ぼやく前に仕事仕事。ほら新規入ってきたぞ」
「げっ!ブルードラゴン召喚じゃん。最近呼び出し頻度高いって愚痴ってんだよねあの竜。アサインやだなあ」
「はいはい仕事仕事」
魔法の神秘の裏側は今日も、システマティックに動いている。

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