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空想お散歩紀行 あの空の上の上へ

木々が生い茂る林の中にひっそりと佇む小さな小屋が一つ。
その入口付近できょろきょろと辺りを見回す青年。誰かに見られていないか、常にこの時は緊張が走る。
ひとまず周りに人の気配が無いことを確認した彼は、その小屋に入る前に少しだけ空を見上げた。
本来ならそこにあるであろう空には、蓋のように何かがふさがっている。
天上大陸。彼の足元に広がる大地と同じように、もう一つの大地が空に浮かんでいる。
と言っても、その面積は地上の大地よりはかなり少ない。
それでも、空の多くを覆っていることに変わりはない。
天井大陸に住んでいるのは古代の昔に起こった戦争による勝者の末裔で、地上に住んでいるのは敗者の末裔ということに歴史には書かれている。
天井大陸より上には当然何も無い。なので遮ることの無い太陽の恵みを存分に受け、豊かな自然と作物に溢れているとか。
反面地上では、天上大陸に所々開いた穴から漏れる陽光で何とか暮らしている。まさにおこぼれをもらっているという表現がふさわしい。
そのわずかな日が差す土地を巡って、地上は地上で争いが絶えない。
もはや地上に住む者たちにとって、天上大陸に住む人々は神も同然であり、自分たちの頭上にいて、自分たちが苦しんでいる原因であることなどもはや疑問にすら感じないようになっていた。
この青年を除いては。
彼がその小屋の中に入る。中は部屋とかがあるわけではなく、一つの空間がただあるだけだった。
その空間の中央に大きな布が掛けられた物体が鎮座している。まさにこの小屋の主かのように。
彼がその布をどけると、そこにあったのは木と鉄の塊だった。
知らない人がそれを見たら、巨大な鳥を連想したかもしれない。
鳥のように翼を広げ、そこに佇んでいるのは、今や地上では失われた技術、飛行機械だった。
かつての戦争で勝利を収め天上に住むことになった人々は、いつか復讐者が地上から昇ってくるのを恐れ、空に関する技術や知識を根こそぎ奪い去っていった。
しかし、完璧なものなどこの世には無いように、飛行機械に関する文献はわずかながら地上に遺された。
それを発見した彼は空への野望を胸に今まで少しずつ飛行機を作り続けている。
もちろん誰かに見つかれば罪に問われることになるのは間違いない。
だから今日も、ただ一人静かに、あの天上大陸の上の景色がどんなものなのか想像しながら、飛行機械の完成に向けて一歩ずつ歩みを進めていく。

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