空想お散歩紀行 黒い翼と大地の守護者
あらゆる物事は進化している。
そのスピードは様々だが、間違いなく先に進んでいる。
進んだ先がいいことなのか悪いことなのか、それは分からないが。
とにかく進化しているのだ。それは俺たちカラスも同じ。
少なくとも大昔のカラスは人間の捨てたゴミ袋の開け方なんて知らなかったはずだ。
強さで言えば鷲とか鷹があがるのかもしれないが、賢いのは俺たちカラスだ。攻撃しか知らない獣は決して頂点に立つことはできない。いかに強い牙を持っている獣だとしてもだ。まあ、鳥だけど。
とにかく鳥の世界を最終的に支配するのはカラスだろう。
しかし、どんな歴戦の常勝軍団だろうと必要な物がある。食料だ。
そして今、俺の目の前にあるのは人間が作った畑。食料の野外生産施設。
遥か昔から俺たちカラスの食料調達の手段でもある。
だが、先程も言った通り全ては進化している。
俺は今、目的の畑の周りに何十本と立っている木々の一つの枝に止まっている。
そこから見えるものは、畑の作物だけではない。
そこにいるものは、昔からその場を守護している者。
カカシと呼ばれているガードだ。
そして今や、カカシは畑の真ん中でただ突っ立っている棒きれでは無くなっている。
自立行動、自立判断のAI搭載。手には刀剣類の武器を携帯して、畑に入る不法侵入者は残らず排除する任務を負っているのだ。
カラスが畑を荒らし、カカシが作られ、そのカカシをカラスがくぐり抜け、カカシが改良される。その繰り返しを何度も何度も繰り返してきた結果、今があるのだ。
「提督、準備ができました」
部下のカラスが報告に来た。
「分かった。それでは作戦を開始する。第1部隊が北東側から突入。あまり深く入りすぎるな、あくまでやつらを引き付けるのが仕事だ。その後、第2部隊、第3部隊を北西側と南西側から時間差で突入。第4部隊は別命あるまで待機」
かしこまりましたと、短く返事をした部下はすぐにその場を飛び去る。
いよいよ始まる。俺は今一度枝から畑を見下ろす。
カカシの一体が、その一つ目のセンサーをこちらに向けていた。
「・・・気付いているな」
だがそれでも俺たちカラスのやり方は変わらない。そこにある作物を得るための戦いなのだ。
その時、カァーカァーカァーと伝令役のカラスの鳴き声が空に響いた。
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