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空想お散歩紀行 機械の命が求めるもの

降り注ぐ雨の中を傘を差した一つの影が歩いていた。
その影は手にいくつもの瓦礫とも言えるような金属製の何かを抱えている。
そしてそれらを抱える手もまた同じように金属の光を薄暗い雨の中でも鈍く反射していた。
それは手だけでなく、全身が金属の部品で構成されたロボットだった。
山のように積み重なっている金属の瓦礫とその間からたくましく生えている植物の道を彼は歩いていた。
しばらく歩いた後到着したのは、かなり大きな石造りの建物で周りにある他の建物に比べれば崩壊も少なかった。
そこが彼の家だった。
彼はまず発電機の付ける。建物内に設置した灯りが一斉に点き、雨で暗かった空間に光が行き渡った。そこは彼が拾ってきた様々な機械や金属の部品などで一杯だった。
すると奥から彼に近づいてくるものがあった。彼と同じ金属の体の四つ足歩行の物体。見た目は小さな犬のようだった。
彼はそのロボット犬の頭を撫でると、拾ってきた物を机の上に置き、早速何か作業に取り掛かった。
彼はこの世界で目覚めた。目覚めた時は世界がすでにこうだった。
自分以外に動いているものがいない。周りにあったのは崩れた人工物とそれに絡みつく植物だけだった。
自分がなぜ目覚めたのかは分からないが、最初から知識だけはあった。
電気や機械に関する知識。何をどのように組み合わせれば何ができるのかといった情報。
目的がなかったが、彼はとりあえず生きようと思った。
使えそうな部品を集め、壊れた機械を直した。
そしていつしか彼は自分と同じように動く仲間を作り始めた。
今では彼と同じように作業をするロボットが外を何台も走っている。このロボット犬もその一人だ。
そして今も、彼の目の前の作業台の上には自分と同じ人型のロボットの素体が横たわっていた。
拾ってきた部品を一つ一つ吟味しながら彼は組み立てを進める。
これらの作業が、彼の意志によるものなのか、それとも単なるプログラムによるものなのかはもはや誰も知ることはできない。

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