空想お散歩紀行 秋深い朝の風景と純白女子高生
「おはよ~。寒い寒い寒い」
いつも通りの朝。良く晴れて空は高く透き通っているが、空気は先週から一変し、いきなりその鋭さを増してきた。
「急に寒くなりすぎ!どうなってんの?」
「ね~。私来週くらいにしようと思ってた衣替え今日しちゃったよ」
朝の駅前。サラリーマンや学生が途切れることなく流れている。
「うう。私も冬用のにしてくれば良かったかも」
女子高生の二人組が急に変わった季節に文句と言いながら歩いていた。
制服から覗く白い肢体が健康的な若者を象徴している。
「いいなあ。ミイはあったかそうで」
「実際ぬくい」
「うう、まだいけるかと思ったけど、やっぱだめだ。アタシも明日から厚手のに変える、包帯!」
彼女たちの手の先から足の先まで覆っている白い布。それは包帯だった。
マミーの女子高生。
ここケルト市ではごく普通の光景だ。
マミーに、ヴァンパイア、カボチャ頭。街を行く人々は皆何かしらの特徴があった。
「でも、温かさだけでいいんだったら、ぶっちゃけ毛糸の包帯が最強だよね」
「いやー、でもそれはやだな。毛糸の包帯って小学生でも今時やってないでしょ」
「まあね。あ、そうだ。ほらほら、これ」
そう言うと、ミイと呼ばれた方の女子高生が制服の袖を少しまくり上げた。
するとそこには、薄いピンク生地に刺繍とラメが入った包帯が巻かれていた。
「あ!それ、クレパトの新作!?」
「そ。買っちゃった」
彼女が腕に巻いていたのは、今マミー女子高生の間で人気のブランドが発売している包帯だった。
「いいなあ。いくらした?」
「メートル5千円だから、50センチだけ買った」
「まあそれくらいならお手頃かなあ」
うらやましそうにマジマジと包帯を眺める。
「でも、思いっきり校則違反でしょ」
「だから、こうして制服の下に着けてバレないようにしてんでしょーが」
「意味あんの、それ?」
「見えないところに気を使うのが、ホンモノのオシャレってやつよ」
「なるほど」
得意気な声でオシャレを語っている女子高生。その顔もおそらく声と同じ調子なのだろうが、あいにく頭も包帯で覆われているので、その表情はいまひとつ読み取れなかった。
「何かバイトでもするかなあ。ああ、いつかブランド包帯で全身を巻いてみたい」
「それやるにはいくら掛かるんだろうね。お金欲しい」
ファッションとお金の話は、どの種族の女子高生にも共通の話題であった。
しかし彼女たちの財布事情は、夏用包帯よりもさらに冷たく風が通り抜けていた。
そしていつもの学校が近づいてくる。
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