空想お散歩紀行 薬草1個8G
世界には数多くの冒険者がいる。平和のために魔王を倒さんとする者たち。誰も見たことの無い未開の土地や未知の財宝を発見することを夢見る者たち。ただ旅を楽しむ者たち。そんな千差万別の冒険者たちにも共通のことがいくつかある。
その一つが旅をする上で欠かせない道具の数々だ。
「今日はいい天気で良かった。さあ、今日中に収穫しちまうぞ」
とある若者が元気いっぱいに一日の作業を始めようとしていた。
ここはとある薬草農家。
日常の生活から、危険地帯への旅に至るまで怪我には必須の薬草を栽培している。
作られた薬草は街の道具屋へ卸され人々の手に渡る。
「早めに収穫が終われば、あっちの方に時間が使えるかな」
彼が言うあっちとは、農作業と平行してい進めている彼自身の半分趣味のようなことだ。
それは、品種改良で新たな薬草を作ること。
従来の薬草は少しの怪我の治療と体力回復に使われている。これに毒消し草の解毒の効能も加えることができないかと彼は考えているのだ。
薬草と毒消し草は旅のお供として欠かせない。しかし冒険者というのは基本身軽を好む。必要最低限の物しか持ちたくないと常に考えている。
そこに、薬草と毒消し草両方の効能を持つ新しい薬草があればすごく助かるはずだ。
それに新しい薬草を作ることができれば、その特許で大金も手に入ってくる。
「できればもっといろいろな改良を試せればいいんだけどなあ。体力と魔力を両方回復できる薬草が作れればいいんだけど。魔力回復の香草はそもそも入手困難だしな。地道にやるしかないか」
畑への道すがら、彼の頭はいつも新しいアイデアを生み出すことでいっぱいだ。
世界の平和を守ったり、世界の謎を解き明かしたりしているのは、確かに伝説級の力を持った英雄や冒険者と呼ばれる者たちかもしれない。しかしそんな彼らも、地道に日々薬草を作っている彼のような存在がいなければ偉業を成し遂げることなどできないのだ。
世界は常に無数の歯車が廻り、噛み合い、成り立っているものなのだ。
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