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空想お散歩紀行 お掃除人

コンロウ地方、地下深くに可燃性のガスが埋蔵されている土地で、時折地面の裂け目から火が飛び出してくる。
普通だったら人は滅多に近寄らないが、そこに響く声が一つ。
「そおおおおれええッ!!」
そこに動く影は二つ。一つは声の主である少女。そしてもう一つは、黒いゲル状の不定形の生き物。彼女が右手に持っている剣が怪物を地面から引きはがし、空中へと放り出す。
「これで終わりッ!!」
少女は左手に持った銃を怪物に向ける。瞬時にその銃口に陣が展開し、そこから水流が矢のように飛び出した。
「!!!!」
水の矢に貫かれた怪物は悲鳴を出す暇もなく煙のように消滅した。
怪物が消えたことを確認した少女は、剣と銃を収めながら、ようやく一息ついた。
「やれやれ、思ったよりしつこいやつだったわね」
今から数十年前。世界を支配していた魔王が英雄によって打ち倒された。しかし魔王が滅びた際に、その血や肉片が無数の欠片となって世界中に飛び散った。それが「穢(ファルネス)」と呼ばれる存在となり、魔王がいなくなった世界でもいまだに人々に脅威を与えている。
そしてそれら穢を駆除するのが、彼女たち「掃除人」の役割だった。
彼女は腰に付けていた通信機を手に取るとスイッチを入れて話し出す。
「あーあー、こちらソウプ隊アリエル。レベル3相当の穢をたった今落としたわ。どうぞ」
報告をし終えたら今日の分は終わりと思った矢先、通信機の向こうからの言葉にアリエルは声を荒げた。
「ちょ!応援に向かえってどういうことよ!こちとらもう8体も落としたのよ。他のやつに・・・」
抗議の声を上げるが、さらに大きな声が通信機を壊さん勢いで響いてくる。
「ああ、はいはい。行けばいいんでしょ。行けば。で?どこに行って、どんなやつを相手にすればいいの?・・・・・はあ!?レイト型って、最悪にめんどくさいやつじゃない!
デオドラ処理くらいは終わってんでしょうね?・・・あっそ、分かった。やるわよ。やればいいんでしょ」
乱暴に通信機のスイッチを切ると、大きくため息をつく。
「まったく、この世界がきれいになるのはいったいいつになるのかしらね」
ぼやきながらも銃の残弾を確認しながら、彼女はその場を後にした。

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