空想お散歩紀行 3色テロリスト:赤
大陸横断巨大飛空艇「ビフレスト」
現在、上空8000メートルを飛行中。目的地は貿易都市アスガルド。乗員約1800名を乗せ、今夜一晩を掛けて飛び続け明日の朝に到着予定。そのビフレストの第5デッキ、グレートBの客室に7人の男女がいた。全員黒を基調とした服を着ている。それらはそれぞれ細かなデザインは違うものの、しっかりとした作りでなおかつ動きやすさを重視した服であることは共通していた。もう一つ共通しているのはその場にいる男女全員が獣のように鋭い目つきをしている点だ。自分が狩る側だという自負に溢れていることを今は隠そうともしていない。
その中のリーダー格の男が口を開いた。
「さあ、皆殺しだ」
心底嬉しそうにその男が言うと、周りの人間も同じように笑みをこぼす。
彼らはテロリスト集団「ギンヌンガップ」
彼らの目的は、ただ殺すこと。そこに政治的な目的や金銭的な目的もない。ただただそうしたいからそうするだけという快楽殺人者の集まりだった。今回この飛空艇を選んだのもおもしろそうだからという理由だけだった。
「思いっきり楽しもうぜお前たち。逃げるやつは殺せ。抵抗するやつは殺せ。男も女も大人もガキも誰一人差別することなく殺しまくれ」
その言葉を合図にするかのようにその場にいる全員が赤い腕章を付ける。
「その腕章が血でさらに赤くなるまで楽しんでこい。この空の上に真っ赤な海を作ろう。明日の朝この船は船としてじゃなく、棺桶として到着するんだ。ああ、なんてロマンチックなんだ・・・」
恍惚とした表情のまま男は立ち上がると他のメンバーに言った。
「他のやつらにも連絡入れろ。パーティーの開始だってな」
この飛空艇にはギンヌンガップのメンバーが数人に分かれて乗船している。その数合計28名。
「さあ!ここの乗客全員を絶望の中に沈めろ!!」
殺戮の夜が幕を開けようとしていた。この漆黒の闇広がる空の上で。
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