空想お散歩紀行 生き残る魂
何でこんなことになったのか、今になっても理解ができない。
始まりは突然だった。
(映画館に映画を見に来ていただけなのに)
気づいたら見たこともない森の中にいた。
そしてどこからともなく響いてきた大声。
それが指示してきたのは、生き残ること。
その生き残る条件というのが、
「ホントに何なの?これ」
私の小指から伸びる赤い糸のような物の先に繋がる・・・毛玉?のような丸い物体。
それは、片手で掴めるほどの大きさで、空中に風船のようにぷかぷかと浮いている。
こいつを守ることが条件らしいのだが。
「おいおい、何なのとは心外だな」
おまけに、しゃべるし。
「アタシはお前の魂さ。お前とアタシは一心同体。同じ存在だっていうのに」
仮にこいつが言ってることが本当だとしても、何で私の魂がこんなに口が悪いのか理解ができない。
一応、学校では優等生として過ごしているというのに。
「お前、自分で自分のこといい子だと思ってるだろ。でも、魂は正直だ。お前がいい子なのは本当だろうが、それと同時にアタシも本当なんだ」
にわかに信じることはできない。できることならこいつと繋がってるこの糸を外してしまいたいが、それもできない。
「おっと、糸の扱いには気を付けなよ。このサバイバルを生き抜くにはアタシたちが両方無事でないといけない。この糸が切れたらアタシもお前もどっちもお陀仏だからね」
サバイバル、生き残る、と言うことは・・・
「そうさ。これに参加してる他のやつらの糸を切りつつ、自分の糸は守るんだ」
何でそんなことをしなければいけないのか。
私はこいつに聞いてみたが、それは答えられないとのことだった。私の魂のくせに。
「まあ、仲良くいこう。アタシだって消えるのは嫌だ。ちゃんとお前に協力するからさ」
こうして謎のサバイバルゲームが始まった。でもこの時の私はまだ気付いていなかった。私の、そして他の参加者たちに宿る能力。そしてこのゲームの先にとてつもない秘密が待っていることに。
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