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空想お散歩紀行 見上げるはさらに上

思い描いていたことが外れるということはよくあることだ。
よくあることだと分かってはいても、それでもガッカリする気持ちが無くなるわけではない。やっと念願の目的を果たしたと思った。
この天上都市に住むことができるようになって。
今や、地上は例の大災厄で住める場所がどんどん小さくなっている。人は住む場所を求め、空へと昇った。
そして詳しい理屈はよく知らないが、雲を地面のようにする技術で、そこを新たな居住区とした。
俺もやっとこさの思いで、この空の上で暮らす権利を手に入れたのだ。
その時は文字通り天にも昇るような気持ちだった。
きっと雲の上は日当たりが良くて、眺めも良くて毎日気持ちがいいのだろうと思っていた。
だが、その予想はいきなり外れることとなる。
少し考えれば分かることだった。
雲と言っても、全てが同じ高さにあるわけではない。
俺が住むことができるのは、階層で言ったら下部の雲だった。
今日も見上げると、そこには上層階の雲がいくつもある。
おかげで、それらの雲に阻まれてイマイチ日当たりが良くない。
オマケに周りの雲の影響もあるのか、俺が住んでいる地域は普段から霧が掛かっているように視界が悪くなる時間帯が多い。
いいことと言えば、下層の雲だから、地上の眺めはいいことくらいか。でもそんなものは差し引きでまったく大したことはない。
いつかまた引っ越したいな。と、俺はゆったりと流れている上層の雲を見ながらいつも思っている。

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