熱燗
《熱燗》
『あんた、首も細いし顔もちっさいからタートルネックようにあうなぁ。』
「ほんまですか?いやぁ、嬉しいわぁ。わたし、徳利のセーター好きなんですよ。ほんま嬉しいです。」
『あんた、若いのに徳利て。うちでもよう、言わんわ。』
「いや、ついつい徳利言うてしまうんです。でも、タートルネックだって直訳したら亀首ですよ。」
『"亀首セーター"…ださいなぁ。』
「ださいですね。」
『"あんた、首も細いし顔もちっさいから亀首セーターよう似合うなぁ。"』
「…なんやろ。急に嬉しくないです。」
『せやな。なんかごめんな。』
「いえ、わたしの方こそいらん事言いました。すみません。」
『ええねん。そやったらこの際新しくカッコええシュッとした言い方考えようか。』
「そうですね。」
『そもそもなんでタートルネックやねん。』
「ググったんですけど、"亀 (turtle) が甲羅から首を出す様に似ることからこう呼ばれる。"だそうです。」
『へぇ。なんかそう思うとしっくりくるようなまわりくどいような。』
「そうですね。もっとわかりやすいほうがスタイリッシュやと思います。」
『そしたらさ、見たままやねんけど、首の長い服ってことで、キリンとかでええんちゃう?』
「キリンセーターですか。」
『"キリンセーター"や。』
「可愛いですね。"キリンセーター"。キリン柄とかで着たいです。」
『Giraffe sweater.』
「なんで、急に英語なんですか。」
『タートルネックに打ち勝つためには全世界に、広めなあかんやん。そうなったら、英語やないとな。』
「Giraffe sweater. 」
『Giraffe sweater. …Repeat after me.』
『Giraffe sweater. 』「Giraffe sweater.」
「あ、熱燗。やっときましたよ。めっちゃ待ったわぁ」
『いやぁ、ほんま首を長くして待ってましたわ。』
【酒の肴。第2篇〜冬〜より抜粋】
*架空の話です
*関西弁が変なのは大目にみてください。
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