ナポリタン
〈ナポリタン〉
『なぁ、知ってるか。ナポリタンつーのはナポリにはないんだと。』
「あー、なんか聴いたことはありますね。」
『ナポリにねーのにナポリタンってまさに外国に対しての憧れが強い日本人ならではの名前だよな。』
「まぁ、そうですね。」
『おれぁよ、そんなナポリタンが好きなんだよなぁ。だってよ、日本にしかねぇんだぜ?ナポリタン。ナポリっつてんのに。』
「はぁ。」
『まぁ、オメェみてえな若造にはまだ早ぇかもな。このナポリタンの良さを理解するには。』
「"ナポリタンの良さ。"は、わからないですが、とりあえずスパゲッティの種類としては好きですよ。僕はベーコンよりはウィンナー派です。」
『お、いいね!おれぁ角切りベーコン派だけどウィンナーの良さもわかるぜ。ウィンナーならではのプリっとした感じいいよな。おめぇわかってんじゃねーかよ。』
「あ、これわかってるって事でいいんですか?」
『そうだよ。いいんだよ。あのな、大事なのは知識量じゃねぇ。こういう話の時に大事なのは、それのどこが好きか、っつーのを話せるかどうかなんだよ。"嫌いなんです"って言われたらそれまでじゃねーか。でも、"ここは好きなところです。"って言えばよ、話が続くじゃねーかよ!』
「なるほど。そもそもこの話って"ナポリタンについて"ではなく"会話の成り立ちについて"って言う事でいいんですか?」
『あぁ?何言ってんだ?おめぇ、やっぱわかってねーな。』
【『おじさんとヤングマン』より抜粋】
*架空の話です
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