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災害発生時、とある情報担当が感じ経験したまとめ(2020年再編集版)

2018年に発生した胆振東部地震から2年。あの日僕は、台風の対応からそのまま地震発生ととっても疲れていた思い出があります。そして、2020年現在、北海道は穏やかですが九州地方には最大級の台風が接近中。みなさん、身を守る行動と、日々の備えを忘れずにしてください。ついつい忘れがちな備えを、今一度見直すためにも、自身への備忘録としても、当時Mediumにかきなぐった思いをnoteに転記したいと思います。

災害発生時、とある情報担当が感じ経験したまとめ

みなさんこんにちは。
北海道では、まだまだ余震の心配が残っている状況ではありますが、僕の自宅も電気が復旧し、台風〜地震と続いた災害対応も落ち着き、通常を取り戻してきました。
普段は、インターネットやテレビの中で見ている自然災害。ちょっと他人事な部分ってあったりしますよね。
でも、災害は突然降りかかりますし、実際に被災した際には、どんな行動を取るべきなのか。
今回は、ニッチな世界ですが、特に僕のような情報担当をしている自治体職員(小中規模自治体職員)に向けたまとめを、実体験ベースのかなり主観的な視点で書き留めたいと思います。(地域情報化アドバイザーっぽいことをしてみるテスト。)
さきに答えを述べてしまいますが、「必要なのは日頃の備え」あるのみです。


通信について

通信は100%では無いということを思い知りました。
まず自分ごととして感じたこと。
僕ら自治体職員は災害が発生すると、家族を家に残し、真っ先に職場に行くことになりますが、家族と連絡が取れないのは精神的にもまいってしまいます。(今回はまだ、ある程度の余裕が僕らにはありましたが、実際被害が大きな自治体のことを思うと、胸が苦しくなります。)

まず、携帯電話は、ついつい家族全員で契約をまとめたりしていることが多いことと思いますが、今回は、誰もが想像しなかった、まさかの北海道全域長時間全域停電により、携帯電話電波塔バッテリーの喪失が発生。
これは、必ずしも起きるわけでは無いですし、様々な要因がありますので、一概に「いつ切れる」というのはわかりませんし、きれないかもしれません。
しかし、万が一契約しているキャリアの通信がきれてしまった場合、完全に連絡を取り合う手段がなくなってしまいます。これは結構なストレスでした。

今の時代、MVNOなんかもありますし、いろんなキャリアの通信手段を持っておくことは、「通信の保険」として良いなあと感じましたし、さらに、いろんなところで言われ続けてますが、通信手段がなくなった際には、どこに家族が集まるかなど、事前に決めておいても良いかもしれません。

職場においても、今回のような全域大規模停電が起きると、アナログ通信すらダメになるということがわかりました。
ISDN以降、電気が必要なものは停電で切れる、というのはわかっていましたが、そもそもその上流がダメになると、「アナログが切れる」なんて思っても見なかったので、いろいろ再考が必要だなと感じました。
なによりも、こういった場合、役場や消防、警察に連絡がつかない場合どうすべきかなどの情報を周知しておく必要があるのかもしれません。
また、当町では2年前に発生した台風の影響で数日間(僕の自宅は3日間)の停電を経験していたので、災害発生後すぐに庁舎で携帯電話の充電スペースを設けていたのですが、これも重要だと思います。(タップはアース付き且つ抜け防止機能付きじゃ無い方が、多くのアダプターつけられます。)
ただ、今の時代、情報端末を使うのであれば、モバイルバッテリーも災害用品として一人一台以上、自身で準備しておく時代かもしれませんよね。

2020年追記
なお、現在僕は、各バッグに1つくらいのイメージでモバイルバッテリーを入れています。電源喪失は年々ダメージが大きくなっている感じがします。安心感という意味でも。

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乳製品がなくなった当時のスーパー

災害時のSNSの利活用

これまで、「大きな自治体は必要だよね」的に思っていた、僕を含む情報担当の方々、これ絶対にやるべきことだと今回身をもって感じました。
報道等でも言われている、SNS上のデマ(これには、ソース元が明らかでは無い内容の善意による拡散も含む)ですが、実際に当町規模の町(人口16,000人弱)でもありました。
当町では、つい先日発生の台風21号対策から「これからの時代なんだから必要だよね。大きいところはやってるんだし。」くらいの気持ちで、防災無線での情報をテキスト化(当然手動)し、公式LINEアカウントへの配信テストを始めたばかりでした。

すると、人づてと、同僚職員から(これすごい重要だったと思う。)「あれ、よかったよ」というポジティブな意見を多く聞けたことから、直後に発生した北海道胆振東部地震でも運用しておくか!と判断。
すると、配信を始めた直後に同僚が、「自分の奥さんのLINEグループに断水するという誤情報が流れているらしい」という事を教えてくれました。
災害があると、やはりみんな不安ですし、特に今回は道内全域が停電でテレビなどで何も情報が得られない。

特に若い世代だと、防災無線を聞いていなかったり(自宅にこもりっぱなしじゃ無いですもんね。)するので、情報取得方法はインターネット経由。
インターネットは、良くも悪くも、自分自身が情報をフィルタリングしてしまい、さらに、それらしい情報が文字に置き換えられてしまうと、「それが事実である」と思ってしまうところが往々にあると思います(自戒の念を含む)。
これらは、不安をあおりたいということではなく、自分自身が収集した情報を、みんなの為に良かれと思って拡散させる。

これがデマの原因(僕は善意の悪意と呼んでいますが)になってしまうのでは無いかと推測しています。(研究者じゃ無いから推測で話してごめんなさい。)
さらに、例えば、これを、10–30代の人が取得し、それを自分の両親なんかに口頭で教えれば、それがまた口コミで広まってしまう。

そう、情報取得手段がインターネットしかなくなってしまうとSNSは、びっくりするほどの大きな力をよくも悪くも発揮してしまうのでは無いかと感じました。

2018年9月11日追記
昨日、SNSを利用されていない方々(60代前後)から、「今夜また地震があるらしい!自衛隊or海上保安庁が言ってたって!!」との話を受けました。
ソースは息子・娘・孫。推測はどうやらあっているのかもしれない・・・

このことから、誤情報に対するカウンターとしての公式情報は非常に重要であると考え、配信頻度を一気に高め、公式LINEだけではなく、公式twitter・公式Facebookによる配信を始めました。
また、最も素晴らしいと思ったのは、ただ公式に配信するだけではなく、同僚たちが率先して自分の入っているLINEグループ等に、公式アカウントを拡散してくれ、結果当町の公式LINEアカウントの登録者数は、1日で約300増えました。
結局は顔の見える関係性がオンライン上でもより大きな力を発揮するものだなと実感しました。

2020年追記
観光分野やマーケットな分野でSNSの広がり、特に口コミ的なものが注目されること多いと思いますが、災害時なども重要です。特に本格的に運用していなかったアカウントについては、その信頼性を担保するためにも、職員がまず自身のSNSでシェアするなどのテクニックは重要だなと感じました。
なお、森町ではその後公式Instagramのほか、SNSではないですがYahoo!防災速報の利用も開始しています。

給水情報は「LINEを見てきました」と言ってくださっていた方々も多かったらしく、また、これは僕自身想定していなかったことですが、田舎になればなるほど、町を離れて暮らす方々も多いため、SNSなどで、町の状況をお知らせすると、状況が把握でき、安心されるようです。
今回は直前にテスト運用をしていたので、スムーズでしたが、日頃からどんな情報をどうやって公開していくのか?ということは決めておいた方がいい感じがしています。

サーバとクラウドについて

情報担当あるあるな話かもしれませんが、自家発電があったとしても安心してはいけません。
設置している、かわいいサーバちゃん(そろそろ5歳)、当然UPSを噛ませていますが、商業電源と自家発電が繰り返し切り替わったせいなのか、UPSが悪さしたのか、冗長化している電源の片系統が誤作動を起こし、再起動を繰り返すという現象が発生しました。
一応冗長化しているので、正常なシャットダウンは動き、致命的なダメージこそありませんでしたが(やっててよかった冗長化電源)、まあ大丈夫でしょ、ではなく、電源は必ず冗長化しておいた方が精神衛生上安心です。
さらに、安心したのがやはりクラウドの力です。
今回はそんなに大きな被害はなかったので、大きな活用はありませんでしたが、万が一電源が全て喪失したり、前述のことが原因でサーバに障害が発生したとしても、復旧すればデータは守られていますし、とりあえずの業務は行うことができる。
こういうと、じゃあ「日本全体がー」という話をされることがあるのですが、それは国家の一大事なので別軸で考えるべきでしょう。
むしろ、どこにデータを置いているかなどをじっくりと考える必要がありそうですが、クラウドがあるというのは精神衛生上最高に良かったです。

2018年9月9日追記
個人的に聞かれたので補足しますが、UPS導入とか電源冗長化しただけで正常なシャットダウンをするわけではなく、当然のごとくちゃんと設定しないとダメですよ。ご自身で設定できない場合はちゃんと仕様に盛り込んでね。あと、これをやってるからバックアップ必要ないとかはダメ絶対。約束だよ!日頃からRAIDコントローラの障害とか全然ありえますからね。

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乳製品はなくとも魚介は見事な品揃えの当時のスーパー。漁業の町最高

これらを踏まえて

僕の持論ですが、テクノロジーはあくまでもツールであり、それそのものが全てを解決するものでは無いと考えます。これまで書いてきた通り、テクノロジーはもろくもあります。
結局は人同士の「生身」のつながりと、愛です。
なので、テクノロジーは「それらのコミュニケーションを補完できる可能性がある」ものでしかありません。
ただし、テクノロジーは、うまく使えれば、ローカル以外との繋がりを持たせてくれ、様々な情報、悩み、精神的なもの、これらを補完し素晴らしい成果をもたらすことも事実だなと改めて実感しました。
実際に僕は、今回(も)、ネットワーク越しの繋がりのおかげで大きな勇気と気づきを得ることができました。(これホント。外から冷静な意見を聞けるととっても役に立ちます。)
逆に、デマ情報など負の側面を持つことも忘れてはならず、溢れる情報の中で、いかに「事実を事実として公表」して行くかが、今後の自治体にとって鍵では無いかと感じます。
のろし、伝書鳩、電話、FAX、インターネット、その時代に合わせたツールをうまく使って行くべきだなとこの台風含め4日間本当に感じましたとさ。
おしまい。

2020年まとめ追記

なお、このあと、縁あって2018年11月発行の経営情報学会誌にこの書き殴った情報をまとめ、寄稿させていただきました。

山形巧哉「災害時における自治体SNSの活用とその有効性」

また、この翌年にはnoteで1年後の雑感を書いていますこちらもあわせてどうぞ

災害発生後1年-とある情報担当が感じ経験したまとめ

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