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リーダーシップの本質は自分らしくたのしむこと。たのしむ姿に人が集まり、みんなの力が発揮される

千年ちとせ建設の代表をしている岡本です。建設会社に加えて、家を借りられないシングルマザーに低価格で物件を貸す会社と、自立に向けた伴走支援を行うNPOを経営しています。

先日、光栄なことにForbes JAPAN3月号に取り上げてもらいました。テーマは、新しいリーダーを語ろう

僕のインタビュー記事には「みんなとだから、早く遠くに行ける。新領域を開く インクルーシブ・リーダーシップ」というタイトルをつけてもらいました。

僕はずっと、カリスマ性で人を引っ張っていく強いリーダーではない自分と向き合ってきました。そのことに悩んだ時期もあったし、コンプレックスのようにも感じていました。

そんな僕が、ソーシャル事業の文脈でも跡継ぎの文脈でもなく、リーダーシップの特集で紙面を飾れたのはとても光栄なことでした。

悩みながらたどり着いた僕の今のリーダーシップのあり方は、「こんなリーダーであるべき」というリーダー像を手放したときに、初めてみえてきたものだからです。

このnoteでは、そんな僕が考えるリーダーシップについて、書いてみたいと思います。

この春、新しくマネージャーやリーダーになった人はもちろん、リーダーシップについて見つめなおしたい管理職の方にとって、役に立つことが少しでもあればうれしいです。

流行りのリーダーシップ論は手放していい

リーダーといえば、昔から歴史上の人物をベースに語られてきました。

「ナポレオンから学ぶリーダー像とは?」「リーダーシップの取り方は信長型・家康型・秀吉型の3つのタイプに分けられます・・・」といった具合です。

少し前から、新しいリーダーのあり方としてサーバントリーダーシップが注目されるようになりました。

最近はハーバード・ビジネススクールのリンダ・ヒル教授が「羊飼い型リーダーシップが必要だ」と提唱しています。これはメンバーの才能を生かして集団の力を最大化する、背後から指揮するタイプのリーダー像だそうです。

時代とともに、マッチョで支配型の引っ張るリーダーシップから、後方支援型のサポーティブなリーダーシップが注目されるようになってきています。

「はやく行きたければ一人で進め。遠くまで行きたければみんなで進め」。アフリカのことわざと言われているこの言葉を、最近はいろいろなところで耳にするようになりました。2021年、岸田首相の所信表明演説でも使われています。

はやく一人で行くことよりも、みんなで遠くに行くことに多くの人が共感する時代になってきているんだと思います。これは社会にとって、とてもいい変化だと感じています。

僕もずっとこの、早く1人で行くよりもみんなで遠くへ行くという考え方を大事にしてきました。

このアフリカのことわざをGoogleで検索すると、2018年くらいまでは僕のこのインタビュー記事(出典DRIVE)が1番上に出てきたそうです。今はもちろん違います。この検索結果の移り変わりにも時代の変化を感じます。


こんな風に、時代の変化にあった新しいタイプのリーダー像が示されるのは、とてもいいことだと思います。選択肢は多いほうが思考が広がるからです。

でも僕は、流行りのリーダー像を追いかけることには、あまり意味がないと思っています。

“自分の足りない部分をどうやって埋めるか”ということに、多くの時間とマインドを取られてしまうからです。

リーダーシップの本質はたのしんでいる姿を見せること

ソーヤー効果という有名な話があります。これは小説 トム・ソーヤの冒険に出てくるエピソードが元になっています。

主人公トム・ソーヤはおばさんに壁のペンキ塗りを言いつけられます。ペンキ塗りをするのがどうしても嫌だったトムは、逆にめちゃくちゃたのしそうにペンキ塗りをするわけです。

あまりにもトムがたのしそうなので、友だちみんなが集まってきて、自分にもペンキ塗りをやらせてほしいと申し出るようになります。

このエピソード、僕はリーダーシップの本質を語っていると思います。でもそれは、嫌な仕事の価値を転換したことでも、人のモチベーションを上げることがうまかったことでもありません。

トムが本当にたのしそうに仕事をして、いきいきとしていたこと。だからトムの周りに人が集まってきて、みんなもやる気になった。

このいきいきとした姿、たのしそうな姿でいることが、リーダーにとって1番大切なことだと考えています。

そのための第一歩は、自分自身をリードすること。自分で自分をたのしい状態にリードするためには、自分を知って受け入れることが必要です。

自分の良さを認めたり、何に心が動かされるのか理解したり。行動することで気づくこともあるはずです。何でもいいから、小さなチャレンジをしてみるのもいいと思います。

僕でいうと、誰かと一緒に何かをやるのがとにかく好きなんです。それが自分がたのしく仕事に向き合える源泉です。

例えばこの前、僕が経営するシングルマザーを支援するNPOとスタートアップの合同で、“LivEQuality感謝祭”を開きました。スタッフや応援してくださっているみなさんなど、60名くらいの方々が集まってくれて。

2024年3月2日(土)に開催した、LivEQuality感謝祭。60名くらいの方々が集まってくれました。当日のレポート記事も公開しています。

この日、僕はめちゃくちゃ幸せでした。参加してくれたみんなが本当にたのしそうだったからです。関わってくれるみんなに機会と出番をつくることが、僕のよろこびなんだと実感しました。

もちろんビジョンを達成するためにやっています。困窮するシングルマザーとその子どもたちの安定した暮らしを実現したい。でもそのビジョンと同じくらい、関わってくれている人たちのことも大切です。

人をビジョン達成の手段とは見ていない。仲間になってくれたみんなもたのしくチャレンジしていけるほうが、きっと課題解決もうまくいく。そんな信念をもっています。

その結果、さらに人が集まってきてくれる。そうなると僕はますますたのしいわけです。

自分らしく、心からたのしんでいる姿を見せるリーダーシップ。僕はようやく体現できるようになれたなぁと感じています。

リーダーが自分をないがしろにしてもうまくいかない

最初から自分らしくリーダーシップが発揮できたわけではありません。

僕にはリーダーとして大きな失敗経験があります。

コンサルティング会社を辞めてソーシャルセクターに転職。NPOの経営や事業の責任者を担うようになって、2年たった頃のことです。

当時の僕は、メンバーみんなで一緒になって頑張ってきたつもりでした。でも2年目が終わった合宿のタイミング。メンバー全員から糾弾され誰もついてきてくれない、ということがありました。

合理的な判断だけをするリーダーだったと、今なら分かります。自分が大事だと思うことをただ押し付けていたんです。

タイミングは東日本大震災のあと。なんとかしなければという大変な局面で、やるべきこと、解決すべきことが山積みでした。

震災の支援事業をはじめたことで、組織も急拡大していく。職員数はその2年で10人から50人に増えていました。

それなのに僕は、人をないがしろにしていた。

しかも、そのないがしろにする対象に自分も含まれていました。

やるべきことのために、周りと自分を犠牲にしていた。リーダーが辛いなと思いながらやっていることが、メンバーにとっていいはずがないんです。

その結果、もうついていけないとみんなの気持ちが爆発したのが、合宿のタイミングだったんだと思います。

この状況を作ったのは自分だなと。目の前に起こることはすべて自分が作り出しているんだと、このことを通じて痛感しました。

たのしいことと、楽なことは違う

リーダーにとって一番大切なことは、自分がいきいきとした“ご機嫌な状態”でいること。

こういう話をすると「そうはいっても・・・」という反応をもらうことがあります。「いつも笑っていられるわけがない」というのが、リーダーのみなさんの本音だと思います。

僕も24時間笑ってたのしそうにしているわけではありません。必要な時は厳しいことも言います。僕のことを怖いと思っているメンバーもいると思います。

それでも今はみんながついてきてくれるのは、僕がメンバー1人ひとりを大事に思っていること、誰よりもいい組織にしようと思っていることが、伝わっているからだと思います。

たのしいって、決して楽なことじゃないと思うんです。

たのしい状態でいるのって、実はめちゃくちゃ大変です。稼がないといけないし、馬車馬のように働かないといけないし、厳しいことだって言わないといけない。

そういうことも全部ひっくるめてたのしくご機嫌でいられるようにする。そうやって自分をリードする。それがリーダーシップの基本だと思っています。

分かりやすさに逃げない

少し前に「僕がやっていることって一言で表せない。色々やっていて、分かりづらいよね・・・」とつぶやいたことがありました。

それを聞いたうちの会社の役員が「たくやさんって、昔でいう村長さんみたいな感じですよね。村長さんは村の経営者でもあるし、政治家でもあるし、教育者でもある。1人で色々な役割を担っていたと思うんです。たくやさんもそんな感じがします」と言ってくれたんです。

僕はこの言葉がすごく刺さって。

効率性を追求する時代では、一つの役割に集中して専門性を高めることが評価されて、分かりやすい仕事や肩書のタグに、お金や人が集まりやすかったと思います。

でも、分かりやすいタグがついていないところにこそ社会課題があるし、そもそも人はタグを付けて生まれてくるわけじゃない。

どんな仕事をしているか、何の肩書をもっているかっていうタグじゃなくて、存在そのものが重要で。

その人らしさから生まれる事業であったり、その人の良さをいかしたリーダーシップが、リーダーもメンバーも一番輝くと思っています。そのほうが、自分の可能性も他人の可能性も心から信じられる。

いま多様性が重要視される時代になりました。でもどんどん違う方向にいっている気もしています。

僕は、多様であるという分かりづらさの中に可能性を見出して、事業を形にしたり、人を信じて取り組む自分でありたいと思っています。

なんて、こんなことをいうとすごく都会的でスマートなリーダーみたいですが・・・

僕の毎日は朝7時半に出社して、建設会社の作業着を着て、みんなでラジオ体操と朝礼をすることから1日がはじまるんですけどね。

そんな日常の僕とはかなり違った姿をForbesさんに撮影してもらいました。

Webでも記事が公開されたので、読んでもらえたらうれしいです。


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