見出し画像

呼吸‐03 体重の10%はミトコンドリア

それでは、内呼吸によって細胞内に取り込まれた酸素はどのように利用されるのでしょうか? ここで登場するのが、生物や理科の授業で習ったミトコンドリアです。

細胞内の小器官であるミトコンドリアは、ひとつの細胞の中に平均300〜400個、脳や筋肉、肝臓などの代謝が活発な器官の細胞には数百から数千個も存在することがわかっています。


細胞の数37兆×ミトコンドリア300個でも凄まじい数なわけですが、ミトコンドリアはなんと私たちの全体重の10%を占めると言われています。しかもそれぞれのミトコンドリアは人体の細胞のDNAとは異なる、「ミトコンドリアDNA」と呼ばれる独自のDNAをもっています。人体の細胞分裂とは別に、ミトコンドリア自身が分裂、増殖、融合といった機能をもっているというわけですね。

ミトコンドリアは元々、別の生物であり、それが細胞内に住み着いて「共生関係」が出来上がったと考えられていて、私たち人間は無数のミトコンドリアと共に生きている、ということになります。

ミトコンドリアは細胞内に取り込まれた酸素をつかって炭水化物を分解し、アデノシン三リン酸(ATP)と呼ばれる分子を生成します。ATPが加水分解されてP(リン)がひとつ離れる際にエネルギーが生じるのですが、我々の細胞はこの時のエネルギーを使って活動しているのです。


身体を動かす、食べ物を消化吸収する、話したり聴いたりする、眠っているときでさえ、私たちの身体はエネルギーを使っているわけですが、それもミトコンドリアがATPを産生してくれるおかげなのです。

 ここでは人間が主役なので、主に人間について述べていますが、ATPはあらゆる生命全てが共通に利用する生体エネルギーです。魚類も、両生類も、昆虫も、大腸菌などの細菌もATPを頼りに活動しています。

「火星に生命体が存在するかどうか」の調査では、火星探査機に装備されたATP検出キットが使われたのですが、ATPが指標になっていることからも、ATPは生命体の証と言えるでしょう。

 息をはく時の呼気には二酸化炭素が多く含まれていますが、これもATPの産生機序が深く関わっています。それは、ミトコンドリアでATPができる際に、二酸化炭素が生じるからです。

 細胞は二酸化炭素を赤血球のヘモグロビンに受け渡し、血流に乗せて心臓を経由し、肺動脈を経て肺胞の毛細血管に到達して、外呼吸による二酸化炭素の体外への放出が起きます。酸素と結合したヘモグロビンは、オキシヘモグロビンとよばれ、鮮やかな赤色をしていますが、酸素を放出して二酸化炭素や老廃物を取り込むとデオキシヘモグロビンとなり、吸光度が変わって暗赤色になります。

病院や検診で採血した際に、「血液のどす黒さ」に驚いたことがある方も少なくないと思いますが、それはしっかりとヘモグロビンが二酸化炭素を捕らえている証拠なので、心配はいりません。あの清純派の女優さんも、ブラック企業の血も涙もないパワハラオーナーも、静脈血はそれなりにダークな色をしています。

PS. 知れば変われる、パフォーマンス医学


いいなと思ったら応援しよう!