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危険な脳のダメージ5 2歳が試合?無知は罪なり

スポーツ安全に関して「目を疑うようなショッキングな映像」が飛び込んでくることがあります。

特に子どものスポーツについては

「こ、これをありとしているんだ」

と唖然とするものも・・・。

スポーツ安全指導推進機構には「これは危険では?」と疑問に思われる動画リンクや現場のリアルな情報が寄せられますが、その中からいくつかリンクを見てみましょう。

こちらはある指導者から「2歳が殴り合い、蹴り合いをしているんですが、どう思われますか?」というメッセージと共に送られてきたYou Tube映像です。


2歳が出場するフルコンタクトカラテの大会がある。
出場を許可する指導者がいる。
試合に出場させる保護者がいる。
日々、試合に向けた練習が行われている。

この映像が現状を伝えてきます。

こちらはある医療者から送られてきた幼稚園と小学生のスパーリングの映像のリンクです。

プロボクサーでも命の危険を伴う競技を、頭蓋骨も軟らかく、脳が密な幼稚園生が行っています。

「ヘッドギアをつけているから大丈夫」

そんな声も聞かれますですが、ヘッドギアは脳の安全を保障するものではなく、ときに機会の増大、力積の増大、ダメージの蓄積の増大につながります。

このようにWEB上には子どもの安全を考慮しているとは言い難い映像が無数に見つかります。

2018年、タイで13歳の子どもがムエタイの試合で死亡するニュースが駆け巡りました。

タイ・バンコクのラマティボディ病院(Ramathibodi Hospital)で子どもの安全と事故防止に取り組む「Child Safety Promotion and Injury Prevention Center」は、2012年から5年にわたり、335人の子どものムエタイ選手と252人のムエタイ選手ではない子どもを対象にMRI検査を実施・比較した。

 同センター長のアディサク・パリタポンガーンピム(Adisak Plitponkarnpim)氏によると、子どものムエタイ選手は一般的な子どもに比べ、「明らかに」脳の破損が多く見られ、IQ(知能指数)も低かったという。

 アディサク氏は、「子どもの頭蓋骨や筋肉は発達し切っていないために損傷を受けやすい」と述べ、損傷が蓄積されると、成人後のアルツハイマー病やパーキンソン病リスクが増す恐れもあると指摘している。

AFPニュースより

不幸にも亡くなってしまったこの少年は、8歳からリングに上がり、13歳で短い人生の終焉を迎えることになりました。

この痛ましい事故は、瞬く間に世界が知るところとなりました。

世界には子どものフルコンタクトカラテやキックボクシング、総合格闘技などは年齢制限がある国や州がいくつもあります。

命や健康に関すること、特に子どもの安全確保・人権擁護については世界の潮流を無視することはできません。タイ政府も「12歳未満のコンタクトスポーツの試合を禁ずる方向に」舵を切ることになりました。


 残念ながら我が国ではスポーツ安全の対策が遅れています。

 SNSでみられる幼稚園生や小学生が殴り合う動画のコメント欄には「かわいい」「ガッツがある」「将来がたのしみ」そんな礼賛が溢れています。この状況に何の疑問も抱かない大人が一定数(相当数?)いるというわけです。

 そんな中、全日本柔道連盟は、小学生の全国大会の廃止を決定しました。過熱する勝負偏重主義、多発する事故やダメージの大元である大会を無くす方向です。

子どものコンタクトスポーツ、特に格闘技系、武道系のあり方は、見直されるべき時期に来ています。

 スポーツ安全を推進する立場である私は、8歳の時に空手に出逢い、13歳から29歳まで試合に出場していました。格闘技やコンタクトスポーツだから得られること、学べることもたくさんあります。

 と同時に、もっと安全性について大人が考えていく必要性も感じています。とくに安易な低年齢化の流れはもっとも危惧するところです。

無知は罪なり、というソクラテスの言葉があります。

子どもは大人のミニチュアではない。
子どもは戦闘用にできていない(保護の対象である)
未完成ゆえ、脳の危険がある。
心臓震盪のリスクが高い。

などなど医学的知識が国民マストの常識となり、子どもの身体と心から発想したスポーツ、長期的な成長に主眼が置かれたスポーツに進化して欲しいと願っています。その一歩として、「子どもたちの健康を守る指導者」の見える化を進めて参ります。

  スポーツ安全指導推進機構 二重作拓也


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