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強さの磨き方03 強さとは何か?
強さとは何でしょう?
強くなるとはどういうことでしょう?
残念ながら「はい、こういうものです。こうすれば強くなれます」と簡単に解が得られるものではありま せん。なぜなら「強さ」はあくまでも相対的な概念だからです。
仮にケンカが滅法強い「地上最強の男」がいたとしても、彼が強さを発揮できるのは「地上」という環境があってのものです。宇宙空間に放り出されたら、おそらく宇宙飛行士に勝てませんし、海の中では潜水のプロに勝てないでしょう。
そして地上であっても、エベレストやキリマンジャロの頂上付近では、登山家が有利でしょうし、未開のジャングルの奥地では原住民のほうが地の利に長けているはずです。
床にサラダオイルを大量にぶちまけたら? ガソリンに火を放ったら? 飲み物に強力な睡眠導入剤が混ぜてあったら? どこかの国から挨拶代わりの弾道ミサイルが飛んできたら?
「地上最強の男」はあくまでも、「環境や条件がある程度整備された上で」ようやくその強さを発揮できる、ということになります。もし彼が患者として全身麻酔中であれば、彼の命は麻酔科医の手の上に。もし自然災害に見舞われたら、救助隊の手の上にあるのです。
「強さとはあくまでも相対的なものである」
まず、この認識を共有したいと思います。
「どんな強さを求めるのか?」「どんな状 態を強いとするのか?」で強さの中身は大きく変わってきます。
たとえば、登山家、映画俳優、投資家、主婦、作家それぞれに必要な強さは全く同一ではないでしょうから、それぞれに必要な強さを求めることになります。
この前提の上で、もしもあらゆる人々に「共通の核」があるとすれば、「人間」の二文字になるでしょう。
「なぜ我々は強さを求めるのか?」「なぜ我々は競いたがるのか?」「なぜ強さという概念が必要なのか?」これらの問いに向かうには、「人間を理解する」ことが回り道に見える近道です。
本書は厳密な科学の書でもなければ、由緒正しき思想の書でもありません。
「強さとは何か?」という命題について、ジャンルレスにいろんな方向から光を当てて、「あーでもない、こーでもない」の試行錯誤の途中経過としての書であります。
「強さとは何か?」の命題をもつのも人間ならではです。
本章では「人間理解」をキーワードに、私たち人間に本来備わっている強さについて考察してみたいと思います。
(第1章 【強さと人間理解】より)
紫本、公開中。