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糸井さんと羽生さん⑧ ~残るよさ/消えちゃうよさ~
ほぼ日さんでの糸井重里さんと羽生結弦選手の対談、Day8。
「現代人が1日で受け取る情報量は、江戸時代の1年分、平安時代の1生分」
とも言われる未曽有の情報洪水社会。
「そんなことを書いてどうするの?」
敬意も、品位、矜持も見当たらない「煽り」「ゴシップ」「偏向」が拡散されてしまう。
ネガティヴな情報ほどキャッチしやすい脳の特性も相まって、信じる人が多ければ、ウソもホントになる危うい時代。
伝えたいメッセージも情報の洪水に飲み込まれてしまう。
そんな中、テーマは「送り手としての難しさ」に至る。
糸井さん、羽生さんがどのように時代を感じているか?
そして、どんなことを大切にしているか?
かなり具体的に語られる。
どんなに手をかけた作品も、
情報としてやり取りされて消費されていくなかで、
時代を超えて残るようなものをつくるのは
たいへんなことだと思うんです。(糸井さん)
その困難に向かい続けている、
糸井さんだからこその問い。
時代に左右されないようなものは、
たぶん、自分が表現したいものを
どんどん突き詰めていった芯の部分に、
絶対あるとぼくは思っているので(羽生さん)
間髪入れず、羽生選手。
うーん、タイトで、力強い。
時代について、思考、試行、志向を繰り返してきたことが伺える。
そして目指すべき北極星のような羽生選手の光り輝く言葉がこれだ。
いつか見てもらえる日が来る
10年後でも、20年後でも、
50年後でも、100年後でもいいので(羽生さん)
未だ来ていないその日に意識を置いている。
可能性を信じる人だけに、可能性はやってくる。
そういう大切なことを教えてくれる。
この流れの中、
糸井さんの言葉が突き刺さる。
だから、残るよさと、消えちゃうよさと、
両方があるんですよね。(糸井さん)
ああああ、そうかー!そうだったかー!!
(ズドーーーーーーーーーーーーーーン)
僕はこれまで、「消えちゃう」について
あんまり考えてこなかったというか、
「消えちゃう」を肯定してこなかった。
残るよさ/消えちゃうよさ
言われてみれば、
あの時いっしょにみた花火は、あの時いっしょに走った時の汗は、あの時全身が揺れた音楽は、すぐに消えちゃったけど、今も記憶の中にしっかりある。
背景には(消える=残らない)への怖れがあったからだと思うけど、僕は「残る」と「消える」を対立概念としてとらえていたことに気づいた。
もしこの対談に出逢っていなかったら、「消えちゃうよさ」について考えることもなかっただろう。
ここで再び出てくるMOTHER2。
『MOTHER2』が出たときは
生まれてなかったわけですから、
まさに時代を超えてぼくの心に残っていて。(羽生さん)
糸井さんが残したものが、羽生さんの心に残っている例として語られる。
「ああ、これが羽生結弦さんの人としての魅力なんだ」と思った。
自らが看板であり、背負う責任も大きければ、
そのつもりはなくても自分のフィールドに話題が傾いてしまうことがある。
なぜなら自分の感覚を優先することが周囲にプラスをもたらす、という基本構造があるからだ。
だけど、羽生さんのバランス感覚は痺れるほどに絶妙だ。
フィジカルで追求してきたバランスが、対話の中にもごく自然に感じられる。フィギュアスケートでの美の追求が生き方の姿勢になっている。運動と態度にきちんと橋が架かっている。歴史に残るアスリートだけど、いわゆるアスリートに埋没していない。
(もちろんそれだけじゃないけれど)
僕は、こういうところに羽生結弦という「人」をビシビシ感じる。
そして糸井さんもまた、
今の時代を鋭敏に感じながら、
時代を超越する巨大なライブラリーを日々構築し続けている。
ほぼ日刊イトイ新聞も、
映像として残しているほぼ日の學校も、
いま生きている人をぜんぶアーカイブとして
残せるのがいいと思っているんです。(糸井さん)
でも、ぼくらは、そこを削らないことで、
そのときにそこであった、
なまものとしての感じが表現できると思っていて。(羽生さん)
人間への尽きない興味が原点にあるからこそ、ほぼ日さんで浮かび上がってくるのは「記録」でも「話題性」でもなく「人間」なのだろう。
想像しながら、解読しながら、感心しながら、納得しながら、考えさせられる。
ネガティヴな情報も増え続けるWEB空間において、ここまでポジティヴで学びの深い記事がたくさんの人たちに支持されている
この対談は10年後、50年後には「時代が変わった転換点」の記録として読まれるんじゃないだろうか?
▶はい いいえ
こたえは、未来に。(Day9へ続く)
PS.身体を使う、全ての人へ。