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完璧なアルバム
音楽が好きだ。僕の生活空間にはいつも音楽がある。
まるで空気を吸うように、僕は音楽を取りこむ。
それぞれの音楽には、魅力があって。
誰がいちばん、どれがベストなんてランクは本当はなくて。
プリンスもいい、デヴィッド・ボウイもいい、ケイト・ブッシュも、ジェフ・ベックも、ザ・ポリスも、エアロスミスも、ディー・ライトも、アリシア・キーズも、みんないい。みんな好きだ。それぞれに好きだ。
でも、あえて「完成度」という意味で。
全アーティスト、バンドから、「アルバムを1枚選べ」と言われたら、僕はおそらくフリートウッド・マックの『タンゴ・イン・ザ・ナイト』を選ぶと思う。
「え?プリンスじゃないの?」
と思われた方もいるかもしれないけど、プリンスじゃない。
プリンスの場合、その不完全性も含めてプリンスだ。
超カッコいい曲が突然ブチッって終わったり、
いつのまにか次の曲に移行してたり、
公共の電波ではオンエアできない曲も入っていたりとか、
そういうことがふつうにある。
もちろん楽曲の完成度はおそろしく高いけれど、アーティストの生理まで反映してるような音楽だから、「プリンスは大嫌いだけどこのアルバムは大好き」の公式が基本的には成り立たない。
フリートウッド・マックはバンドと作品、それらが「いい意味で」切り離されている気がする。
音楽大好きでいろいろ聴いてきた人にとっては、「完璧なる調和の世界」が聴こえるはずだし、洋楽をあまり聴いたことがない人にとっては「キャッチ―な洋楽の入り口」として十分機能すると思う。
だから「聴き手を選ばない」という意味での「完成度」って言いたかったのかもしれないな。
海外ではフリートウッド・マックは、スーパーバンドかつレジェンドとして認識されているし、それこそまだ学生時代のプリンスなんかも、フリートウッド・マックを聴いて育ってきていて。大いに影響を受けたりしているんだけど。
日本ではどうも正当評価されている気がしない。
たとえば、大ヒットしたアルバム『噂』。1978年にグラミー賞の最優秀アルバム賞を受賞、31週連続1位、年間チャート1位。2012年の時点で累計4,000万枚の売上を記録していて、ローリング。ストーン誌『オールタイム・ベストアルバム500」(2020年版)では7位にランクインしている。
『噂』からの”DREAMS”。
ちなみにプリンスの映画『パープルレイン』は元々、仮のタイトルとしてDREAMSと名付けられいた。またこの楽曲で「サンダーが起きるのはレインの時だけ」という歌詞もある。楽曲パープルレインの歌詞をフリートウッド・マックのスティービー・ニックス(この映像ではリードボーカル。リードボーカルが3人いる)に依頼したことがある。
『タンゴ・イン・ザ・ナイト』から"Big Love"
僕はこの曲から後追いでフリートウッド・マックを聴き始めたのだけど、このグループは、流行りのサウンドを使わないので、時代性を帯びていなくていいなと思う。
というわけで、僕は仲良くなった人で「まだ聴いたことがない人」には、フリートウッド・マックをお薦めしている。CDごとプレゼントすることもあるくらいだ。
ここまで読んでくれた人に、このサウンドが届くといいな。
・・・・・というわけで、今日は一日中、フリートウッド・マックを聴いて過ごしたんだ。
あれは高校のときかな、僕がダビングした『タンゴ・イン・ザ・ナイト』のカセットテープをいつもウォークマンで聴いてくれていて。北九州から遠く山口の職場まで通勤してくれたね。
何年か経ってから「あの時、フリートウッド・マックの音楽にはホント救われたんだ、素晴らしい音楽を教わった」って言ってくれたよね。
僕が大好きな音楽を、僕の大好きな人が、僕以上に大好きになってくれたことが本当に嬉しかったし、僕もそんな大人になろう、と思ったんだ。
あ、世間では「命日」というらしいけど、僕はその言葉は使わない。
お父さんが僕の中にすっと入ってきてくれた大切な日だからね。
その日から毎日、ずっと一緒にいるし、今日もお父さんと一緒にフリートウッド・マックを聴いたんだ。涙がぶわっと溢れたけど、それは悲しみの涙じゃなくて、心が浄化されるような涙だったよ。ありがとう。
・家族と音楽からたくさんのことを学んだ、その記録として。