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重力‐04 地球と仲良く
それでは自分自身を持ち上げてみましょう。両手で両足首を掴んで「エイッ」と引き上げる、とスッ転んで危険ですので、それはやらないようにお願いします。自分自身を持ち上げるとは、今いる場所より高いところに行く、ジャンプなどのことです。
ジャンプは地球の重力に逆らっているように見えますが、それはジャンプ動作の後半であって、前半は違います。前半で「どれだけ地球と仲良くできるか?」がポイントです。
「気をつけ」の姿勢から、つま先を閉じ、両足を並行にして立ちます。右足だけを正面方向、普段の歩幅の1・5倍から2倍くらい前の場所に置き、また元の位置に戻す。次に左でも同様にやってみる。というのをやってみましょう。足が前のフロアに接地するとき、次のパターンを試してみてください。
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A:つま先から着地するパターン
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B:足の裏全体が同時に着地するパターン
この両方を比較するとどうでしょうか? Aは戻りやすく、Bは戻りづらかったと思います。つま先から入ると、脛の後ろ側にある下腿三頭筋群が引き伸ばされます。筋肉は伸ばされるのが嫌いですから、伸張反射などのプロテクト機能が働き、縮もうとします。Bが戻りやすいのは、重力方向に身体が落ちるときに「そのあと戻りやすい身体の使い方」をしているからですね。
階段を降りるときにもA、Bの接地の仕方を試してみると「A:景色がちょっと下がって上がる」「B:景色が上がり続ける」の違いを視覚情報からも感じられると思います。どのように地面と接するか、で、そのあとの動きが随分変わってしまいますよね。
次は実際にジャンプしてみましょう。「もっと高く跳ぶ」意識をいったん消して、「上手に落ちる」にフォーカスして試行してみましょう。
・落ちた時の股関節の角度、膝の角度、足関節の角度はどんな感じがいいのか?
・頭の位置はどこがベストなのか?
・目線はどのように動かせばいいのか?
・どんな姿勢だと高く跳べるのか?
・身体のどのパーツをどの順番で落とせばいいのか?
・どのような運動イメージをつくれば楽に遂行できるのか?
・ジャンプに適した呼吸はどんなものか?
などなど、ひと項目ずつよーく身体を観察しながら、検証と修正を繰り返していくといいと思います。
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一流のパフォーマーは、重力を味方につけて「地球と仲良く」するのがとても上手です。フィギュアスケートの羽生結弦選手のジャンプはおそらくは人類における「究極」の領域で、とにかく感動したくて(98%)、研究目的もあって(2%)、よく動画を再生するのですが、説明不要のジャンプの美しさはもちろん、ジャンプにいく前の身体の落とし方が芸術的に美しいと感じています。
身体の各パーツが調和するような連続性をもって、地球に自然に導かれるかのように重力方向にスッと落ちる。でも落とし過ぎることなく、ジャンプに必要な最大筋力が発揮される角度に落ちていて……。
でもそこから瞬間的に神経支配が切り替わって、今度は天に引き上げられているかのように宙を舞います。(どうしても比喩的な表現になりますが、説明しきれないから芸術なのです)
あらゆるジャンルのパフォーマーにとっての世代を超えた最上級のお手本として、またミラーニューロンを大いに刺激してくれる運動の技術として、脳にしっかり記憶させておきたいパフォーマンスです。(拙書『可能性にアクセスするパフォーマンス医学』より)
・羽生結弦選手の「地球と仲良く」はジャンルを超えるお手本です。
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