一瞬の興奮、一生忘れられない
今月もWebライターラボのコラム企画に参加します。
6月のテーマは「ライブ」。
僕にとって「ライブ」は、その場限りの体験だと思っています。
目に映る光景や耳に届く音は、ふいに忘れてしまう。
でも、たった数分の興奮は、一生忘れられない。
そんなライブの想い出を語ってみます。
バイトの先輩、熱すぎる圧
高校1年生の夏。仲良くしてくれるバイト先の先輩がいた。
先輩は3つ年上の大学1年生。バイトの休憩時間になると「最近、何にハマってる?」と、よく話しかけてくれた。
しかし、薄々気づいていた。先輩は僕の関心事には興味がない。
大学で流行っているバンドの話題を僕にしゃべりたいだけなのだ。
そんな先輩からの熱量をとくに感じたのが「くるり」の話。
もう理由すら言わずに「くるりだけは聴いたほうがいい!」というセリフを何度も聞きました。
そもそも、中学を卒業したばかりの僕は、楽曲どころか"くるり"の名前すら知りませんでした。それどころか、先輩の熱すぎる圧に若干引いてしまい、くるりをちょっとだけ敬遠していたほど。
でも、そんな僕を先輩が気にすることはなかった。バイト中もお構いなしに布教活動が続いた結果、とうとう先輩に誘われてライブへ行くことに。
ライブハウスの一体感、ノリきれない自分
ライブ会場は、名古屋にある「クラブダイアモンドホール」。いわゆる「ライブハウス」と呼ばれる小規模な会場で、観客の雰囲気やざわめきに僕は少し緊張していた。
あまり感情を表に出さない僕は、ライブハウスの慣れない雰囲気が少し苦手。しかし、ライブの時間を迎えて、照明が暗くなり、くるりのメンバーがステージに現れると、そんな緊張は一瞬で吹き飛んだ。
会場に何人の観客がいたのかわからない。でも、不思議な一体感を感じた。
当時の僕が唯一知っていた『ばらの花』のイントロが流れた瞬間、「待ってました!」と言わんばかりに会場全体が盛り上がった。あの瞬間、僕は顔も名前も知らない観客全員を「同士」と思うほどに親近感を感じた。
でも、くるりの楽曲をほとんど知らなかった僕は、正直に言うとライブにノリきれずにいた。というのも、曲名がわからないと、曲がまったく耳に残らない。
もはや、まったくルールがわからないスポーツを観戦しているような感覚。周りが盛り上がっているのに、自分だけ輪に入りきれず、取り残さた気分だった。
そして、ライブが終盤に差し掛かり、ラストの1曲。
アンコール前の『ロックンロール』が始まった。
ロックンロールの衝撃、人生の1曲
僕は『ロックンロール』という曲に衝撃を受けた。イントロからラストまで、これほど心地よさを感じる曲に出会ったことがない。
曲に聴き入りすぎて、ステージ上しか見えないほどに心を奪われた。周りの観客どころか、横にいる先輩のことすら見えなくなっていた。
曲を聴き終わったときの感覚は「あれ?もう終わったの?」と思うくらい一瞬だった。というより、ライブ会場にいることすら忘れるくらいに集中していたのかもしれない。
アンコールを待つ最中。僕は初めて先輩に質問をした。
僕にとって、くるりの『ロックンロール』は、間違いなく人生でもっとも聴いた曲であり、一番好きな曲です。20年にわたって飽きることもなく聴き続け、もはや血液のように僕の体内に流れ続けています。
ライブの翌日には、高校の友人に「くるりって知ってる?」「ロックンロールって曲、いったん聴いてみ?」と言わずにはいられなかった。
まるで、どこかの先輩のように。
ライブは一瞬、興奮は一生
ライブは、その場限りの体験であり、同じ瞬間は二度と訪れません。しかし、その瞬間の感動や興奮は、一生忘れられない想い出として心に残ります。
あのライブ以来、僕は「くるり」の大ファンになった。先輩とライブの話を何度もしながら、その瞬間の興奮を心に刻み続けた。
……と、学生時代の想い出を語ってみましたが、本当はライブに行ったことなんてすっかり忘れていました。今回のコラムに「何を書こうか」と考えていたら、ふと当時のことを思い出しました。
社会人になってからは、慌ただしい日々の連続です。Webライターとなったいまでも、学生時代のことなんて思い出す余裕すらありません。
でも、ライブの熱気や観客との一体感は、音源や映像では味わえない特別なものです。その場でしか味わえない瞬間が、心に深く染み込み、時が経つにつれて価値を増していくような気がします。
まさに、僕が好きな『ロックンロール』の歌詞のようです。
Discord名:taku
#Webライターラボ2406コラム企画
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