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映画『教育と愛国』

映画『教育と愛国』を鑑賞。

教育内容への政治的介入の問題を、介入する側とされる側双方への取材を通しながら描いたドキュメンタリー。

大まかな内容は既に知っていたが、実際の会見や取材の映像とともに観ると改めて「怖さ」や「怒り」を強く感じる。

映画では道徳や社会科、そして『表現の不自由展』など芸術が主に取り沙汰されたが、英語科にとっても全く無関係な話ではないのである。(そもそも「歴史修正」「愛国教育」とは別の角度で政治的介入を極めて強く受けている科目である)

英語教育は(教育方法やその成果ばかりで)教育内容への批判的眼差しがすこぶる弱い。「英語科の教育内容」と言われた時、多くの英語科教員は語彙や文法など所謂「言語材料」を想起するだろう。

実際には英語科の(教育内容の一部である)教科書で取り扱われる英文の内容にもプロパガンダは含まれ得る。大坂なおみ選手が「世界で活躍する日本人」として紹介されることはあっても、例えば「二重国籍」という点に着目して国会議員の蓮舫氏にかつて与党の議員や支持者から向けられた態度と比較して描写する教科書はまずないだろう。

アンネ・フランクに触れてナチスについて取り上げる英文は高校教科書で目にしたことがあるが、(従軍)慰安婦や日本に植民地化された地域の人々の声を取り上げながらアジアを暴力で支配した日本を取り上げた英語科の教科書は存在するのだろうか。

今回は鑑賞に先立って英語科教育法を履修している2,3年生に案内して、一緒に観に行く学生を募った。なかなか問題の所在も掴みづらいし、政治的内容に関心を抱く学生は多くないだろうと見ていたが、1人の学生が手を挙げてくれた。(他にも私とスケジュールの合わなかった学生もいるので、是非1人でも観に行ってほしい)

大学生の等身大の言葉として、本人の承諾を得た上で、彼女の感想もここに載せておきたい。(基本原文ママだが、句点などを僅かに編集)

映画の内容やっぱり難しくて理解するのが大変だったけど、政治が教育にこんなにも介入してたことすらよく知らなくて、政治によって教育が変容させられてるのびっくり、政治の力って怖い。結構衝撃的だった。
「ちゃんとした日本人とは」→「左翼ではない日本人」
「歴史から何を学ぶべきか」→「歴史に学ぶ必要が無い」
このふたつ特に印象に残ったな〜〜
あんまし政治に関心なかったけど考えるきっかけになった。
選挙もあるもんね。ちゃんと行ってこな。見に行ってよかった!(後略)

私がこの学生と同じ学部3年生だった時にはこの映画で取り上げられているような事態への理解や関心は全くと言っていいほどなかった。テレビで放送されてギャラクシー賞を受賞した2017年は私が学部4年生の頃。その時も何も知らなかったに等しい。

そう思うと、この映画のホームページのリンクとビラをteamsに貼ってアナウンスしただけで、よく分からないなりに手を挙げて「難しそうやけど、観に行ってみたい」と言える彼女がとても逞しく見えた。

一度これを観てしまったら学校教育にピュアに夢を見ながら先生をすることは難しいかもしれない。もしかしたら今の彼女の持つ先生としての魅力の一部に影を落としてしまうかもしれない。それでも彼女には今回感じたであろうモヤモヤを抱えながら教職という道を力強く歩んでほしい。この問題を知った者として、子ども達への責任の果たし方をどこか頭の片隅に置きながら教師として成長してくれることを願う。

一方で学校の先生という職業に憧れて努力してきた彼女のこれまでの道程は何も否定されないし、これからも彼女なりの理想の教師像を追いかけてほしい。その過程の困難を乗り越えるために彼女を支えたり、幸せを守るのは私の仕事。

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