企画職が『隙間』と『熱』で信頼をつくる話
この記事はBizOpsアドベントカレンダー16日目の記事です。前回はREADYFOR 株式会社の浦野 昌平さんによる「BizOps が取り組むプロジェクトの評価と優先度」でした。
※お知らせ
BizOps協会主催の勉強会交流会vol.3が1月15日に開催されます!私も参加予定ですので、このnoteに対するご意見やご感想がありましたら、ぜひ交流会でお聞かせください。皆様と直接お話しできるのを楽しみにしています!
はじめに
Sansan株式会社COO室の池田です。アドカレ16日目を担当します。
今回は、会社全体の施策や数字ではなく、私が入社してからどのように動き、何を心がけてきたのかを振り返ります。同じように企画職として奮闘する方や、新たな職場環境に身を置く方の参考になれば幸いです。
Sansanは国内最高峰のSaaSである「Sansan」と最速成長SaaSである「Bill One」の2つのサービスを併せ持ち、前人未到の領域を切り拓いています。働く仲間たちは自信と誇りをもって、ビジネスインフラになるべく前進し続けています。
ダイナミックに成長し続ける組織に後から乗り込んだ私が、会社に貢献するためには社内での信頼獲得は避けて通れないテーマになります。
企画職というポジションは、往々にして直接的な売上を生み出すわけでもなく、たとえ不在でも会社が回らないわけではありません。そのため、社内での信頼獲得には相応の工夫が必要になります。
今回はその「工夫」について話をしていきたいと思います。
そもそもCOO室って何?
本題に入る前にCOO室について少しだけ紹介させてください。
COO室は2023年6月に事業部制へと組織を戻したタイミングで新設された部門です。COO直下で各事業を統括し、横断的な戦略立案や事業運営ルールの策定、BPR(業務プロセス改善)など、多岐にわたる課題解決を担います。各事業には独自の企画機能も存在しますが、COO室はそれらを繋ぐハブとして、全社最適・事業目標の達成を目指すのがミッションです。
定量・定性の情報収集を徹底的に行う
課題解決は「何を問とするか?」が出発点になります。
的確な問いを立てるためには、まず全体像を掴む必要がありました。これは、身体の不調を調べる際に全身の状態をチェックする健康診断のようなものです。腰の痛みだけ見ても原因特定には至りませんし、身体の柔軟性や日々の活動量など、周辺情報を得て初めて本質的な問いを立てられます。
そのため、入社当初はとにかく情報収集を徹底し、以下の2つのアプローチを並行して実施しました。
定性情報はとにかく足を使う。
各事業で行われている各種ミーティングに、上司の関係を通じて、片っ端から参加しました。毎回議事録を取り、社内用語や指標の定義、参加者の特徴など、気になった点はすべてスプレッドシートにまとめて上司に質問を投げ、社内文脈の理解を深めました。
また、挨拶を名目に各事業部の部長やマネージャーとも直接話し、彼らが感じている課題や、既に進行中の改善施策を確認。唐突な新参者にも関わらず、丁寧に応えてくださった同僚には本当に感謝しています。
定量情報は自分の手を動かす。
事業運営に関わる資料は、可能な限り全て目を通しました。もし社内でまだ追っていない指標が気になった場合は、自分でデータを引き出して、傾向を掴みます。こうして数値面でも腑に落ちるまで確認することで、情報に対する視座がさらに広がります。
収集した情報を視覚的なアウトプットに落とし込む
得られた定性・定量情報は、Cacoo(作図ツール)を使ってマッピングしていきました。組織構造や各事業の関連性、強み・課題を図解化することで、「どこが見えていて、どこが見えていないか」を可視化できます。自分も(上司も)視覚化によって自分の理解の浅い領域はすぐに判明し、再度情報収集に戻って補完するというループを繰り返しました。
この徹底的な情報収集と視覚化のプロセスは、適切な「問い」を生み出す基盤となり、企画職として信頼を得るための第一歩になったと考えています。
隙間産業を立ち上げる
そもそも隙間産業とは
ここまでの情報収集を通じて「問いの種」は見つかります。しかし、それだけでは大きなテーマを推進することは難しく、組織全体に影響を与えるには十分ではありませんでした。そこで私が選んだアプローチが「隙間産業」の立ち上げでした。(社内認知もない個人造語ですw)
「隙間産業」とは、組織内の縦(上下関係)と横(部門間の連携)の繋がりの狭間、つまりどのチームも十分にカバーしていない領域に手を入れる動きを指しています。(一般的に語られるものとは異なります)。
役割の専門化や組織の拡大が進むと、部署や役割ごとにスキルや知識が集約・昇華され、組織全体は一種の生態系を形成します。その一方で、部門間の接点は細くなったり、情報やプロセスが“詰まり”やすくなる。こうした狭間こそが、企画職が価値を発揮できるポイントになります。
すぐにKPI改善に結びつかなくても、細い接点を太くしていく、詰まりをほぐす――こうした「小さな成功」を重ねることで、じわじわと信頼を獲得していくのです。腰痛を治す際、必ずしも腰そのものだけを直すのではなく、生活習慣や周辺の筋肉バランスを見直すようなアプローチに近いかもしれません。
隙間産業は一日にしてならず
もっとも、この「隙間産業」の立ち上げは現場の習慣を変えるような話が多いので、一方的な発信や動きだけでは不十分です。改善の余地を提示するだけでなく、そこから得られる“未来像”を周囲と共有し、共感を得ることが不可欠になります。最初の叩き台を提示し、関係者と対話をしながら何度も磨き込むことで、「みんなでやってんだよ」という実感が生まれます。
成長し続ける組織では、「今日の完璧」よりも「今日実行・明日改善・未来に向けた種まき」のサイクルが重視されます。そのためには、一刻も早く仮説をカタチにし、小さく試しては改善していく姿勢が求められます。
特に、最初の勢いが冷めないうちにアウトプットを示すことと、関係者のFBを元に改善を最速で行うことが重要です。ただ「何でもやる」のでなく、「この人は本気だ」「このテーマに本気で向き合っている」と感じさせる“熱量”こそが、周囲を巻き込む原動力となります。最初は根性論のように聞こえるかもしれませんが、熱意に裏打ちされた行動は、無形の信用スコアとして積み上がり、いつしか信頼基盤そのものへと変わっていくのです。
誰だって、自分以上に真剣に向き合い、前を切り開こうとする人と一緒に働きたいものです。
毎年が勝負
対話と行動の積み重ねを通じて、社内での信頼も少しずつ固まりつつあると感じています。まだ道半ばではありますが、「この人となら次の一手を考えられそうだ」と思ってもらえる機会も増えました。(多分ね)
この先も、果敢に動き、試行錯誤を繰り返しながら、事業・組織をより大きく、より強く成長させていくつもりです。問いを立て、みんなで創り上げるそのプロセスこそが企画職の最大の醍醐味なのかもしれません。
以上
もちろん、仲間は随時募集中です!