文体をめぐる冒険【序章と目次】
――文体をめぐる冒険に出ることを決意した――2022/1/2
序ある日、男が昼下がりの美術教室にいた。その場所は、誰もがかつて通ったことのある学校教室に似ていた。ただし、置いてあるものが違った。ノートと机の代わりにキャンバスとイーゼルが、黒板の代わりにモチーフとなる小物や彫像が置いてある。それが美術教室である。
絵心のない男は丸椅子に座り、机上に置かれている直方体の静物と対峙していた。その直方体を鉛筆でデッサンするというのが講師から与えられた課題だった。男は、脇卓に置いた