日本人がAIを活用して英語論文を書く方法
私は先日、東京大学にて英語論文を執筆しました。
本記事では、「AIを活用して英語論文を書く方法」についての情報を集約し、体系的にまとめました。
集約した情報源は以下の通りです:
・東京大学の英語論文執筆講座
・教授のアドバイス
・リサーチノート
・AIセミナー
・英語ライティングに関する著書
・実際に執筆してみて気づいたこと
AI技術は変化が速いので、2025年1月現在の情報であることを念頭において、お読みいただければと思います。
全体の流れ
英語論文執筆プロセスについては、以下の通りです。
1. 先行研究/構想:英語と日本語の両方で考える/メモする
2. 日本語で執筆:英語に翻訳しやすい文を書く
3. AIで翻訳:Chat GPTで英語に翻訳する
4. AIで添削:Chat GPT, DeepLで英文の質を高める
5. 校閲:自ら考え校閲する
(できればネイティブチェック)
NG行為
・AIにイチから英文を書かせること
→ 日本語で作ってAIで翻訳するか、自分でイチから英語で書いてください。
・民間企業の英文添削サービスを使うこと
→ 海外トップ大学の出身者や、修士以上のネイティブスピーカーが添削するわけじゃないので、英語論文には活用できません。
→ 特に、フィリピンやインド出身の"ネイティブスピーカー"にとっての"正しい英語"は米国や英国のものと異なることがあります。
1. 先行研究/構想:英語と日本語の両方で考える/メモする
先行研究は、欧米の英語で書かれたトップジャーナルの研究を読むと思います。それらを読みながら、英語で考えることを意識してください。質の高い英文を読むことが、質の高い英文を書くことに繋がります。
最終的に英語で論文を書くので既存研究の重要な部分や引用したい文は、日本語と英語の両方でメモしてください。
特に専門用語や繰り返されるキーワードは、必ず英語のままメモしてください。AIが翻訳する際、AIは確率上もっともらしい単語を選ぶため、専門用語はアウトプットできません。
2. 日本語で執筆:英語に翻訳しやすい文を書く
英語に翻訳しやすい文章を書くポイント
・段落の最初に、最も重要な情報を書く
・「主張 → 根拠/具体例 」の順番で書く
・主語と目的語を省略しない
・指示語/代名詞を避ける
・比喩/イディオムを使わない
・受動態を避ける
・区切れる文は区切る(日本語で書くよりも短く)
・主語を一貫させる 例) 「Xは長所Aを有する。一方、Yは短所Bを有する」→「Xは長所Aを有する。また、Xは、Yが持つ短所Bを有さない。」
・(できれば)英語を直訳したような日本語を書く
例)「Xには長所Aがある」→ 「Xは長所Aを有する」(There isよりhaveで表したいため)
3. AIで翻訳:Chat GPTで英語に翻訳する
Chat GPTに、一文ずつ翻訳してもらいます。
この際、英文の構成や英単語が不自然じゃないか確認してください。
指示文(プロンプト)のコツ
・目的/背景/条件を入力する
・客観的かつ具体的に入力する 例)x 簡潔に o 100字で
・常識から説明する
・同時に複数のアウトプットを要求しない
4. AIで添削:Chat GPT, DeepLで英文の質を高める
3で出来た文を、Chat GPTとDeepLにコピペして、英文を校閲します。英文をコピペして不自然な箇所を指摘してもらい、AIによるバックトランスレーション(英文を日本語に訳してもらって、本来の日本語と見比べる)を行いましょう。
英文の質を高めるポイント
・単語のニュアンスにこだわる(英英辞典 or Chat GPTで調べる)
→ おすすめのプロンプト:What is the difference in nuance between X and Y?
・簡潔な表現に変換する 例)「We performed an investigation」→「We investigated」
・パラフレーズ(言い換え)する(同じ表現を繰り返さない)
・指示語を抽象的な単語で言い換える 例)「The firm adopted A. This improved B.」→「The firm adopted A. This approach improved B.」
・専門用語/キーワードは、パラフレーズしない(既存研究の言葉を使う)
→ 既存研究であえて本来の意味とズラして使われている表現や慣習的に特定の単語を使う場合も、AIは考慮してくれません
・既存研究が使用していた構文を使う
→ 特に、リサーチギャップを指摘する文や、リサーチクエスチョンを提示する文、統計分析の結果を提示する文など、単語を入れ替えれば活用できる文のストックを持っておきましょう
・確度の表現にこだわる
→ demonstrate > show > indicate > imply > suggest
5. 校閲:自ら考え校閲する
最終的にはAIに頼らず、自らの頭で考えることが重要です。
英語圏の大学院生や卒業生が周りに居ればネイティブチェックしてもらいましょう。ネイティブチェックしてもらう場合も、彼らの時間を奪わないために1〜4に注力しましょう。
書いてみて気づいたこと
・カタカナを英語に翻訳する際、誤りが多かったので注意が必要
→ 漢字にしてもニュアンスが変わらないカタカナは、漢字に変換してから英語に翻訳しましょう。
・バックトランスレーションでも見抜けない誤りがある
例)"fundraising"は英単語帳には「資金調達」と書いてあることが多いのでバックトランスレーションでも「資金調達」と出力されますが、この単語はボランティアのために募金を募ることを指します。スタートアップの資金調達は、"raising capital"です。英英辞典には "the act of collecting or producing money for a particular purpose, especially for a charity" と書いてあります。