苦みを工夫で幸せに
突然だけれども、ベトナムコーヒーが大好きだ。濃くて苦いブラックコーヒーに驚くほどの量の練乳を加えると、不思議なことに、その強烈な苦味と甘みが絶妙に溶け合い、カフェイン中毒になりそうなほどクセになる。あの独特の味わいを楽しんでいると、ふと「苦味も工夫次第で幸せに変わるんだな」と感じる瞬間が訪れる。そんなわけで、今回は「苦みも工夫で幸せに」ついて語ってみよう。
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苦みも幸せに変わる。それはベトナムコーヒーに限らない。飲み物の世界にはいくつも工夫があり、苦いものが一工夫で驚くほど美味しいドリンクに変身することがある。
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一つ目は香港レモンティー。濃くて苦味がある紅茶にレモンスライスを浮かべ、砂糖をたっぷり加えたこの飲み物も、ベトナムコーヒーと同様、苦味と甘みのバランスが絶妙。口に含んだ瞬間に広がる甘酸っぱさとほんのり残る苦味が心地いい。
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二つ目はビアフロート。濃くて苦い黒ビールに白いバニラアイスクリームを浮かべた奇抜な一品。ビールの苦味とアイスの甘い香りが調和して、ビールの新しい一面を引き出してくれる。思わず何度も口に運んでしまう魅力があり、お酒に弱い中本でありつつも、ついつい手を伸ばしたくなる。
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三つ目はメキシカンホットチョコレート。苦味が強いカカオに(勘違いされがちなのですが、オリジナルのカカオは苦いという事実)、砂糖、シナモン、バニラ、そして唐辛子を加えて甘みとスパイシーさを絶妙に融合させたドリンクク。カカオの濃厚な風味とシナモンやバニラの香り、さらにピリッとした唐辛子の刺激が加わった風味。寒い夜に飲むと、体が内側からポカポカと温まる癖になる一杯。
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といった風にして「苦味を幸せに変える工夫」は飲料の世界で当たり前のように。そして同時に、人生の苦み、悲しきみも同じように、ちょっとした工夫で、いつしか魅力的な体験に変わることも。
たとえば、数年前に自分が高松のコワーキングスペースで体験した出来事がまさにそうだった。鋭いカッターで小指を深く切ってしまい、慌てて「心臓より高く上げなきゃ!」と思って指を天高く掲げた瞬間、会場中に血が飛び散り、凄惨な光景に。幸運にもその場に看護のプロがいて、応急処置をしてくれたものの、結局病院で縫ってもらうことに。痛み止めが効かず、一晩中眠れないほどの痛みに襲われ、後日に縫い方が甘かいと判明し、もう一度縫い直す羽目になった出来事。
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これだけ聞くとが、苦く悲しく辛いものだけれども、この体験が思わぬ形で役に立つことになる。何かというと、当時にご一緒した誰もが、自分のことを全く忘れておらず、会う度に「あの時は凄かったね」「また怪我しないでくださいよ(笑)」と繰り返してネタにしてくれるように。中には「会場を真っ赤に染め上げたタクトさんという方がいて」という触れ込みで紹介してくれた人も。確かに当時は大変だったけれども、時間の経過というスパイスが加わって至極の経験に昇華された。
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人生の中で、辛いことや悲しいことに直面すると、確かにその瞬間はどうしようもなく落ち込んでしまうもの。けれども、苦いコーヒー、苦い紅茶、苦いビール、苦いカカオのように、工夫次第でそれらは幸せの種へと変わる。自分のコワーキング染め上げ事件もそうだったように。
もし、人生の無情さに押しつぶされそうになったら、甘く、そしてほろ苦いベトナムコーヒーを飲んで、ちょっとした工夫や時間の経過で幸せが生まれてくるとを思い出してみよう。そして皆様もちろん、カッターを使う際には小指の位置にはお気をつけくださいませ。冗談抜きで超痛いですよ。