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個々人の感情から始まる

 今年度は二つの大学で真逆のアプローチからスタートアップ創出をサポートすることに。一つは個々人が持つ感情を起点とする手法、もう一つは研究開発の技術を基盤とする手法。というわけで、そろそろ年度末で無事に講義も閉幕したので、振り返りを進めていこうと思う。まずは『個々人が持つ感情からスタートアップ』について。

このアプローチでは、まず個人の人生を振り返るところからスタート。

「自分が大切にしているものは何か」
「行動原理はどこにあるのか」
「情熱が燃えるポイントはどこか」

 等々を明確に。具体的な手法としては、過去のエピソードをシェアし合いながら、次のような問いを繰り返し掘り下げる。

「なぜその行動を取ったのか?」
「これまで情熱を傾けてきたことは?」
「なぜ無意識に特定の行動を繰り返しているのか?」

 このプロセスは個人ワークではなく、ペアワークやチームワークとして行っていく。なぜなら、自分自身に対して問いを立てると、どうしてもバイアスがかかってしまうから。他者、それも異なる背景を持つ人からの多角的な問いかけにより、自分自身の本質が明らかになっていく。

そういった対話を通じて

「え、こんなことを考えていたんだ!」
「自分にとって大事な価値観があった!」
「自分を突き動かしている無意識はこれか!」

といった気づきが生まれていく。加えて共に語り合ったチームの結束力も自然と高まっていく。

 なぜこのアプローチが重要かというと、一般的なアイデア創出イベントやハッカソン、スタートアップ挑戦の場では、途中で「そもそもこれは本当に自分がやりたいことなのか?」「人生の時間やお金を投じるべきなのか?」と疑問を抱き、熱意が冷めてしまうことが多々あるから。

 一方で、この手法を用いると、「自分自身の根源的な想いを理解した上で」「互いの深層心理を把握した仲間とチームを組む」ということが起こり、結果的に共に挑戦し続ける土台が出来上がっていく。

 ちなみにこのワークは時間を要することはもちろん、時には心の奥底を掘り下げ過ぎて参加された方々が涙を流すほどの感情的な体験となることもあるけれども、それだけの価値のある取り組みだ。

 実は自分自身、スタートアップとは全く関係ないところでこのワークを何度か経験したことがある。シェアハウス時代に一緒に住んでくださっていた冬のソナタの主人公そっくりの先輩の場であったり、そしてまた緑茶が代名詞になっているような後輩の謎の明け方までの禅問答であったり、様々な機会をもらって問いを貰い続け、自分がどのような原理原則に基づいて意思決定をしているのかに気づかされた。ちなみに中本の場合は変化がキーワード。昨日とは違う明日が、それを願う誰しもに訪れるように、という願い。

 中本個人のお話はさておき、そんな風にして心の奥底を掘り返すことができたら、次のステップへ。自分自身が情熱を傾けられる領域の中で、明確でピンポイントの課題を見つけ、それが自分の思い込みではないことを確かめ(検証し)、そこに対して解決策を必要最小限で作り上げ(MVP)…と、そこからはアイデアをカタチにする王道のプロセスがスタート。

 そうやってプロセスを歩んでいくと、心が折れることも減り、仲間と想いが共有され、行動量も増え、ピッチの熱量も上がり、未来が開かれる確率は上がっていく。さぁ、自分の心を理解した上でアイデアをカタチにしていこう。No Talk, All Action!!!

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