自治体の実証集中
とある自治体の担当者から「スタートアップは特定の自治体に集中することが多いんです。東京は人とお金が集まりやすいので放っておいてもいいのですが、それ以外にも実証実験をキーワードに集まる場所には特徴があります」という言葉を耳にすることに。
そこで今回は、彼女が語った「実証実験をキーワードにスタートアップが集まる自治体」というテーマを掘り下げていこう。
─
特定の自治体にスタートアップが集中する理由の一つ目は、担当者のスタートアップへの理解があること。始まったばかりのスタートアップは、実証実験の申請手続きや実行体制が整っていないことがほとんど。そんな状況に対して、申請書類の書き方から実験の実施まで親身に伴走してくれる担当者がいるかどうかが重要。
例えば、固くて青いミカンをボールにして打ち合う「ミカンテニス」の実証実験を行うとする。このとき、自治体の担当者が「ボールやラケットは試作品」「実績もゼロ」「競技人口もゼロ」という現実を理解し、サポートしてくれるかどうかが欠かせない。
─
特定の自治体にスタートアップが集中する理由の二つ目は、補助金の最適化。大事なことは、補助金の金額や割合ではなく、その条件がスタートアップにとって使いやすいかどうか。ある自治体では「VCからの出資を受けていないと対象外」「○○の認定がないと申請不可」など、要件が厳しすぎてスタートアップが近寄らず、結局事業者も進出しないという事例があったという。
例えば、ミカンテニスで考えると、「競技人口が一万人を超えていないと補助金は出ません」「ボールやラケットの試作設計に関しては、テニス協会の認定が必要です」といった条件が課されているようでは、始まったばかりのスタートアップには厳し過ぎ、誰もその自治体には近付くことはない。
─
特定の自治体にスタートアップが集中する理由の三つ目は、アクセスの良さ。どれだけ条件が良く、親身な担当者がいても、実証実験の場所がスタートアップが多い都市部から離れすぎていると、物理的な負担が大きくなり過ぎ、誰も足を運ばなくなってしまう。
例えば、ミカンテニスが東京で始まったとして、ブラジルの自治体が「日本のスタートアップ大歓迎!補助金も充実しています!」といくらアピールしても、地球の裏側まで行こうとする人は中々に登場しないようなもの。
─
スタートアップの実証実験は特定の自治体に集中する傾向がある。その背景には「スタートアップへの理解が深い担当者の存在」「使いやすい補助金制度」「アクセスの良さ」という三つがあるという。
今回の気付き学びを与えてくださった担当者様の自治体が、今後ますます発展することを願いつつ、今回はここで筆を置きたいと思う。