きょうの素問 逆調論篇(3) 2022/9/22
逆調論の3回目。最後の段落の部分です。
黄帝のやたら長い問いから始まります。
帝曰
人有逆氣不得臥而息有音者 ①
(人に逆氣して臥するを得ずして息に音ある者あり)
有不得臥而息無音者 ②
(臥するを得ずして息に音なき者あり)
有起居如故而息有音者 ③
(起居は故の如くにして息に音ある者あり)
有得臥行而喘者 ④
(臥するを得て、行きて喘する者あり)
有不得臥不能行而喘者 ⑤
(臥するを得ず、行く能わずして喘する者あり)
有不得臥臥而喘者 ⑥
(臥するを得ず、臥して喘する者あり)
皆何藏使然 願聞其故
(皆、何の藏の然らしむるや。願わくは其の故を聞かん)
①から⑥を付けましたが、ここでは6種類の状況について、その違いがどこからくるのか、ということを質問しています。
整理してみますと・・・
生活レベル ー 呼吸状態
①横になれない ー のどの音あり
②横になれない ー 音なし
③変わりない ー のどの音あり
④横になれる ー 歩くと喘鳴
⑤横になれない ー 歩くこともできず喘鳴
⑥横になれない ー 横になると喘鳴
この問いに対する岐伯の答えです。
歧伯曰
不得臥而息有音者 是陽明之逆也
(臥するを得ずして息に音ある者は、是れ陽明の逆なり)
足三陽者下行 今逆而上行 故息有音也
(足の三陽なる者は下行す。今逆して上行す。故に息に音あるなり)
陽明者 胃脈也 胃者六府之海 其氣亦下行
(陽明なる者は、胃の脈なり。胃なる者は、六府の海、其の氣も亦た下行す)
陽明逆不得從其道 故不得臥也
(陽明逆して其の道に從うことを得ず。故に臥するを得ざるなり)
下經曰 胃不和則臥不安 此之謂也 【①に対する答え】
(『下經』に曰く、胃、和せざれば則ち臥して安からず、と。此れをこれ謂うなり)
夫起居如故而息有音者 此肺之絡脈逆也
(夫れ起居は故の如くにして息に音ある者は、此れ肺の絡脈の逆なり)
絡脈不得隨經上下 故留經而不行
(絡脈、經の上下するに隨うことを得ず。故に經に留りて行かず。)
絡脈之病人也微 故起居如故而息有音也 【③に対する答え】
(絡脈の人を病ましむるや微、故に起居は故の如くにして息に音あるなり)
夫不得臥臥則喘者 是水氣之客也
(夫れ臥するを得ず、臥せば則ち喘者 是水氣之客也)
夫水者循津液而流也 腎者水藏 主津液 主臥與喘也 【⑥に対する答え】
(夫れ水なる者は、津液に循いて流るるなり。腎なる者は、水藏にして、津液を主り、臥と喘とを主るなり)
帝曰 善
※臥して安からず(張景岳の注)
その度に何度も安らかでないことをいう。いま食べすぎの人や、脹満を病む人がいれば、寝ると必ず安らかではない。これはみな胃気が調和していないからである。
※臥と喘とを主る(張景岳の注)
水病というものは、根本が腎にあり、枝末が肺にある。そこで眠ることができないのである。寝ると必ずあえぐ人は、枝末の肺も根本の腎もともに病んでいるのである。
このように、①③⑥に対する答えはあるのですが、②④⑤に対する答えがありません。ひょっとしたら、脱簡があるのかもしれません。
ただ、6種類ものパターンを並べる黄帝が悪い気もします。
普通、覚えきれません。
それでも3種類説明している岐伯はすごいと思いますが、
質問は手短に、2つまでにお願いしたいところです。
最後に、この問題についての馬蒔の注釈をご紹介しておきます。
夫れ帝の問う所は六にして伯の答うる所は三、脱簡あるのみ。
愚、今意を以て之を推すに、其の所謂臥することを得ずして息に音なき者は、是胃不和にして其の気逆すること甚だしからざるなり。
臥することを得、行することを得て喘する者は、
是れ、胃は病まずして肺腎病むなり。
肺は気を主る。
故に肺病むときは則ち喘す。
腎は骨を主る。
故に行するときは則ち骨労して亦喘するなり。
臥することを得ず。
行すること能わずして喘する者は是、胃腎肺の病なり。
行臥皆難にして喘するときは音有ること甚だし。
此れ之を傷ること甚だしきものなり。
最近、やたら長くなっていましたが、今回はコンパクトに終わることができました。
最後までお読み頂きありがとうございます。
次回からは咳論に入ります。