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きょうの難経 一難〜二難 2021/9/2

今回から『難経』を読んでいきます。
鍼灸師にとっては馴染み深い古典ですが、漢方医の先生方にとってはあまり読む機会が無いと伺いました。どんな話に展開していくのか楽しみです。
(テキストは東洋学術出版社『難経解説』を用います)

【難経の作者についての三説】
1.黄帝説
 『太平御覧』が引用する『帝王世紀』には「黄帝有熊氏が、雷公・岐伯に命じて経脈を論じさせ、疑問点をつぶさに問いたずねて八十一章にまとめ『難経』とした」とある

2.非黄帝説
 十四難にある「元気」という表現は後漢に入って多く用いられている点。他にも後漢に編纂された『白虎通義』と共通する表現や、五行讖緯家が用いた表現なども見られる点

3.扁鵲説
 唐の楊玄操の『難経』序に「黄帝八十一難経は、渤海の秦越人が著した書である。・・・扁鵲と呼ばれた。」とある

ちなみに文献上で『難経』の書名が最初にあらわれるのは『傷寒論』の序文であると言われている。

【書名について】 
1.「難」は疑問点を問い尋ねる意
2.「難」はむずかしい、の意

ちなみに、鍼灸師の息子が、易者の息子の家に遊びにいったときに、
「君の家は「易経」でやさしくていいなあ。うちは「難経」でむずかしくて大変だよ」という笑い話があるとご紹介頂きました。

それでは、一難から。

一難曰
十二經皆有動脈 獨取寸口
以決五藏六府死生吉凶之法何謂也

冒頭からきました。
脈診をする鍼灸師にとって永遠のテーマ。
「獨取寸口(ひとり寸口のみ取りて)」
「以決五藏六府死生吉凶之法(もって五臓六腑の死生吉凶を決するの法)」

つまり、手首の橈骨動脈の拍動で、「死生(生きるか死ぬか)」「吉凶(良くなるか悪くなるか)」が全て分かるのは何でですのん?という問いからこの本は始まります。

その問いに対しての答えは、全身を巡る十二の経絡(手足の三陰三陽経)は全て手首の寸口部に会する、気血の発着点であるので、寸口部を脈診することで全身の状態の「死生吉凶」がわかる、としています。

『素問』や『霊枢』にあるように、脈診の方法は他にも三部九候診や人迎気口診などが提示されていたわけですが、『難経』では寸口部を見るだけで事足りると宣言している訳で、今では当たり前になっている、手首の橈骨動脈での脈診のルーツとして非常に重要な部分だと思います。暗記しておくといいかもしれません。


寸口者 脈之大會 手太陰之脈動也
人一呼脈行三寸 一吸脈行三寸 呼吸定息 脈行六寸
人一日一夜 凡一萬三千五百息 脈行五十度 周於身
漏水下百刻 榮衛行陽二十五度 行陰亦二十五度
為一周也
故五十度復會於手太陰
寸口者 五藏六府之所終始
故法取於寸口也

続いて二難では、その寸口部位について定義していきます。

二難曰
脈有尺寸 何謂也


尺寸者 脈之大要會也
從關至尺是尺內 陰之所治也
從關至魚際是寸內 陽之所治也
故分寸為尺 分尺為寸
故陰得尺內一寸
陽得寸內九分
尺寸終始一寸九分
故曰尺寸也

手首で脈を取るときに、基本となるポジションとして、橈骨茎状突起に中指を当てて、ということが良く言われます。その中指を当てている部分を「関」として、関から遠位(魚際まで)を「寸」となし、陽に属するところ、関から近位(尺沢まで)を「尺」となし、陰に属するところと定義づけています。
また同時に、関部から遠位九分(寸部)と近位一寸(尺部)を脈を診る部位としています。
これはやがて、六部定位脈診でおなじみの、「寸口、関上、尺中」につながっていくわけですが、その話は次回の三難で触れていきたいと思います。

長くなりましたが、最後までお読み頂き、ありがとうございます。




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